【悩んでいる人必見】小学生の子供が暴力を振るう理由と改善方法

子育て・出産

子育て中の皆さんお疲れ様です。
皆さんのお子さんは「やんちゃ」ですか?
小学生になったのに子供が周りに暴力を振るってしまって困っている、トラブルが多く辟易してしまうなど幼稚園や保育園のころから成長しているはずなのに、暴力の癖が抜けないお子さんもいると思います。
その場合、ママやパパは子供への対応だけではなく、学校からの注意や相手への謝罪など負担が大きくなり、すごくつらいですよね。

今回は、なぜ小学生になっても暴力を振るってしまうのか、その理由と改善方法について解説していきます。

小学生が暴力を振るう原因(年齢共通)

小学生の暴力的な行動には、いくつかの共通した背景要因があり、複数の要因が重なって行動として表面化するケースも多いです。
ここでは、小学生のすべての学年に共通した原因を解説していきます。

感情の調整能力が未成熟

小学生の脳は、まだまだ発達の途中です。
「怒りや恐怖を感じる部分(扁桃体)」は活発なのに、衝動を抑える「前頭前野」はまだ未熟というアンバランスな状態が続いています。

  • 低学年
    怒りが一気に爆発しやすい
  • 高学年
    言葉で説明できる場面も増えるが、強い刺激にはまだ衝動的に反応しやすい

研究でも、12歳前後までは感情を抑制する脳の働きが十分に整っていないことが示されていて、「叩いてしまったあとで後悔する」ことがあっても、「やる前に止める力」が育つまでは、まだまだ時間が必要です。

ストレスや不安

学校や家庭でのストレス、不安、緊張が暴力行動につながることもあります。
たとえば、学習についていけない、友達関係でうまくいかない、家庭内で緊張が続く、などが原因となる可能性もあります。

  • 家庭内の不安定さ
    夫婦喧嘩、親の仕事の忙しさ、引っ越しなどの生活変化
  • 学校でのプレッシャー
    勉強のつまずき、宿題の多さ、先生との相性
  • 友達関係のトラブル
    仲間外れ、からかい、いじめなど

イギリスの心理学者であるラットクリフ氏の研究によると、ストレスが溜まった子供は攻撃的行動を取りやすく、特に不安や孤独感を抱える子供ではその傾向が強いことが示されていたり、トロント大学での研究でも、学校生活での失敗体験や友人関係の不安が、暴力行動のリスクを高めると報告されています。

暴力や怒りの模倣

子供は周囲の行動をよく観察して学びます。
これは社会的学習と呼ばれ、子供は良いことも悪いことも周りから、どんどん吸収していってしまいます
暴力についても同様に、ママやパパ、家族、動画、テレビなどから学んでいってしまいます。

  • 親がイライラするとすぐ怒鳴る
  • 兄弟が喧嘩で叩く
  • アニメや動画で暴力が正義として描かれる

こうした経験が繰り返されると、「困ったときは怒る・叩く・叫ぶ」という反応が自然なものとして身についてしまいます。
心理学者のバンデューラ氏の有名な「ボボ人形実験」でも、攻撃的な行動を見た子供は、見なかった子供よりもその行動を真似しやすいことが確認されています。

発達特性の影響

発達障害(ADHD、自閉スペクトラム症など)や学習障害が背景にある場合、刺激への過敏さや感情コントロールの難しさから暴力行動が起きやすくなります。
また、過去のトラウマや不安障害など精神的な要因が隠れているケースもあります。

  • ADHD(注意欠如・多動症)
    衝動性が高く、待つことが苦手で、瞬間的に行動に出やすい
  • ASD(自閉スペクトラム症)
    感覚の過敏さや、言葉で感情を表現する難しさがあり、パニック状態で手が出る
  • 発達性協調運動症(DCD)
    不器用さから友達にからかわれたり、自信を失って攻撃的に振る舞う

アメリカの小児精神医学研究によると、ADHDの子供は衝動性が高く、暴力的行動を取りやすいことを指摘されています。
また、日本の発達心理学研究でもASDやLDの特性を持つ子供は、誤解や刺激過敏による衝突リスクが高いと報告されています。

自己肯定感の低さ

「自分なんてダメだ」という思いが強い子供は、心が不安定になりやすく、防衛のために攻撃で自分を守ろうとします。

  • 何をやっても失敗ばかり
  • 友達や先生から認めてもらえない
  • 家庭でも叱られてばかり

こうした経験が続くと、「どうせ僕なんて…」という感覚が積み重なり、他人の何気ない行動にも敏感に反応し、暴力で返してしまうことがあります。

サンドストローム氏とジョーダン氏による研究では、明示的な自己肯定感が高くても、暗黙的な自己肯定感が低い、いわゆる「防御的自己肯定感」を持つ子供ほど、攻撃的な行動が見られる傾向があるとされています。

1〜3年生の特徴と改善方法

小学1~3年生までの子供の暴力に関する、特徴と改善法を解説していきます。

特徴

  • 言葉の語彙や抽象思考が未発達
    • 感情を「言葉」で整理したり、説明する力が不足しているため、「感じた気持ち」が直接行動に出やす時期。
  • 自己制御のスキルがまだ未熟
    • 我慢や待つ力が弱く、その場の欲求・気分に即応してしまうことで、暴力につながってしまう場面が多い。
  • 模倣学習が特に強い時期
    • 家庭や周囲の大人の姿を吸収しやすく、攻撃的な対応を見たらそれを「正しい反応」として学んでしまいやすい。
  • 安心・安定を強く求める時期
    • 「心の安全基地」となる大人との安定した関係が、落ち着きの基盤となりますが、安定した関係が築けていないと不安を感じやすくなる。

改善方法

感情の「見える化」を徹底する

言葉で感情を表現するのが苦手な子供の場合、絵カードや感情メーター、表情の描かれた紙などを用いて、「今あなたの気持ちは?」と日常的に声をかけることで、子供の感情を可視化しやすく、子供も感情を表現しやすくなります

例えば「怒り」「悲しい」「困った」「楽しい」「びっくり」など簡単な5〜6種類に絞ったカードを用意すると、子供も感覚的に選びやすくなります。

クールダウンの習慣化

感情をおさえられずに暴力を振るってしまう場合、家なら「自分の部屋」、学校などであれば「図書室」など安全な空間で落ち着く時間を取るのが効果的です。

深呼吸や手でぬいぐるみを握るなど、「具体的な行動」をセットにして習慣化すると、自律的にできる力が育ちます。

模範的行動・ロールプレイの活用

ママやパパ、先生など周りの大人が「怒ったとき、自分はこうするよ」と模範を見せたり、ぬいぐるみや人形を使って「こうするとどうなる?」と伝え、実際に疑似体験をしてもらうことで、子供は怒ったときの対処方法を知ることができます。

例えば「お友達をたたいてしまったとき、まずどうしたらいいかな?」という身近でよく起こりそうな出来ごとを、短い質問から始めていきましょう。

ポジティブ行動への注目と褒め

子供は褒められると自己肯定感が高まります。
感情的になってしまった時も、上手くできたことを小さなことでも「我慢できたね」「優しく話しかけたね」と具体的に褒めてあげましょう
小さな成功を見逃さないスタンスで、肯定を積み重ねることが大切です。
心理学者スキナー氏の「オペラント条件づけ理論」によると、望ましい行動は強化することで繰り返されやすくなります。

毎日10分だけでも安心時間を確保する

布団の時間やお風呂、読み聞かせの時間など、「子供の行動を受け止める一対一の時間」を毎日10分でけでも作ってあげましょう
毎日のルーティンに組み込むことで、子供はママやパパが自分を見てくれているという安心感を感じることができ、情緒の安定につながります。

4〜6年生の特徴と改善方法

小学4~6年生までの子供の暴力に関する、特徴と改善法を解説していきます。

特徴

  • 言語理解や自己主張の発達が進む
    • 感情を言葉である程度表せるようになり、「なぜそう感じたか」「どうしてそうしたか」を考える力も育ちつつある。
  • 友人関係や社会的評価への関心が強まる
    • 学級内やクラブ活動など、周囲との比較や評価意識が高まり、ストレスの源になることもある。
  • 抽象的思考の芽生え
    • 「どうしてこの行動をしたのか?」、「もっと他の方法はなかったか?」と振り返る力が少しずつ芽生える。ただしまだ未熟なため、不安定なことも多い。
  • 自立心が萌芽し始める
    • 「自分で選びたい・変わりたい」という気持ちが出てくるので、それを支援する構造があると協力的な対応になることが多い、反対にそれが満たされないと不満を溜めやすくなる。

改善方法

「振り返り」の習慣づくり

毎晩5分間、「今日はどうだった? 何にイラッとした? どうすればもっとよかった?」と問いかけることで、次に同じ場面に直面した際の練習ができるため、冷静な対応をすることが出来ます。
「日記」や「お小遣い帳」形式でもよいので、自分の感じたこと・行動したことを記す習慣が効果的です。

ロールプレイ・グループワークの活用

「言葉でお願いする」「先生や大人に相談する」「距離をとる」といった具体行動をなるべく子供達で考え、ロールプレイやグループワークで練習するのも効果的です。
低学年の頃よりも自主的に考えていく力も育っているため、大人はサポートに回ってあげることで、より練習た内容を意識しやすくなります。

ポジティブ行動への注目と褒め

低学年でも高学年でも同じく、子供は褒められると自己肯定感が高まります。
感情的になってしまった時も、上手くできたことを小さなことでも「我慢できたね」「優しく話しかけたね」と具体的に褒めてあげることに加え、高学年の場合は攻撃ではなく協力・友情・思いやりの行動に対しても、具体的に褒める・認める声掛けをしていきましょう。
大人が意識して「見つけて褒める」習慣を持つことで、子供自身も自分で探すようになります。

必要に応じた専門家相談・支援との連携

行動が複雑であったり、本人も周囲もどう関わればよいかわからない状況には、スクールカウンセラーや発達相談などを早期に活用していくことをおススメします。
発達特性(ADHD等)や情緒の支援が必要な場合は、適切な介入が改善のポイントとなります。

年齢別の改善方法一覧

低学年と高学年の子供の改善方法を一覧でまとめていますので、参考にしてみてください。

項目低学年(1〜3年生)主な対応高学年(4〜6年生)主な対応
感情の理解絵・感情カードによる可視化振り返り日記、感情の言語化
クールダウンタイムアウト、安全コーナーの導入自律的な振り返りや行動選択の練習
模範行動の提示ロールプレイや親・教師の行動モデルグループでの対話やロールプレイ
ポジティブな注目小さな成功も褒める、肯定する資質、視点、協力的行動を具体的に褒める
安心の土台作り親子の一対一の時間定期的な対話時間、家庭でも相談できる雰囲気づくり
自己肯定感の促進安心させる声かけ、成功体験の積み上げ得意分野を認める、協力関係の中で褒める
専門家支援の活用発達相談や支援機関へ早めにアクセススクールカウンセラー、場合によっては医療機関や発達支援などへ連携

小学生が暴力を振るう科学的な理由まとめ

  • 情動制御の発達
    小学生期に前頭前野がまだ未成熟であることは、ビー・ジェー・ケーシー氏などの研究でも指摘されています。
    「感情を抑える機能」が未完成なため、行動として先に出やすいのは自然な発達段階です。
  • ストレスと攻撃的解釈傾向
    ケネス・A・ドッジ氏らは、ストレス環境下では他人の行為を「悪意ある行動」と誤認して攻撃行動をとる傾向が高まると報告しています。
    低・高学年ともに環境の安全性は決定的な要因です。
  • 社会的学習理論
    アルバート・バンデューラ氏は、子供は模倣を通じて「何が有効な反応か」を学ぶとしています。
    親や教師が冷静で非暴力的な対応を示すことは、暴力抑制の面で非常に大きな意味を持ちます。
  • 発達特性と衝動性
    ジョエル・T・ニッグ氏によるとADHDなどの特性をもつ子供では、衝動制御の難しさが突出しやすく、そのため物理的な暴力に繋がることがあります。
  • 肯定的注目の効果
    ジェラルド・パターソン氏の研究では、望ましい行動に対する肯定的な注目が、不適切な行動を減らし望ましい行動を増やすことが示されています。
  • 安全・安心感と攻撃性の関係
    ジョン・ボウルビィ氏の愛着理論、そしてオランダの心理学者ファン・デル・ホルスト氏らの研究を通じて、「安定した関係がある子供ほど攻撃性が低減する傾向」が観察されています。

まとめ

小学生の子供たちが暴力を振るってしまう背景には、脳の発達状況から環境、ストレス、自己肯定感、発達特性など様々な要因が絡み合っています。
いわゆる「しつけ不足」だけが要因ではないため、「暴力を振るうから厳しく叱る」では改善されない場合も多くあります。
まずは、子供の状況や環境をしっかり把握することが、ママやパパが最初にやるべきアプローチです。
できれば、学校とも連携しながら、家庭と学校両方の環境に一貫性を保った取り組みをしていくことで、より効果が上がりやすくなります。
それでも、行動が日常生活に支障をきたしたり、本人や周囲のストレスが大きい場合には、早めに発達相談やスクールカウンセラーなどの専門家に相談するようにしましょう。

子供の暴力の問題は対応が難しく、周囲から非難されやすいため、ママやパパにとっては非常につらいものがあります。
今回の内容がそんなママやパパの力になれば幸いです。