【知っておいたほうがいい子供の病気】RSウイルスの知識

子育て・出産

妊娠中、子育て中の皆さん、RSウイルスについてはご存じでしょうか?
有効な抗ウイルス剤がなく、症状をやわらげる治療である対症治療しかなく、重症化すると酸素投与、補液(点滴)、呼吸管理が必要となり最低でも数日間の入院となります。
よく幼稚園や保育園などで耳にするRSウイルスですが、以前筆者の子供も感染し、重症化してしまい数日間の入院を余儀なくされました。
子供は入院中ずっとぐったりして何度も泣いて、見ていてこちらも泣きそうになるほど辛い入院生活でした。
今回は子供のために知っておいたほうが良い、RSウイルスについて共有します。

RSウイルス感染症について

RSウイルス感染症とは、何度も感染と発病を繰り返しますが、生後1歳までに50~70%が、2歳までにほぼ100%の乳幼児が感染するとされている感染症です。

症状

軽症

鼻水、咳などの上気道(鼻腔、副鼻腔、咽頭、喉頭のことで、鼻から声帯まで)に関係した症状や発熱など風邪に似た症状がでてきます。
軽症の場合の症状は風邪に似ており、解熱剤や咳止め、鼻水止めなどの薬で対処する場合が多いです。

重症

重症化すると肺炎や気管支炎、呼吸困難などの下気道(声帯以下の、気管、気管支、細気管支、肺胞まで)に関係した症状がでてきます。
咳がひどくなったり、変わった呼吸音(ゼーゼー、ヒューヒュー)など呼吸に変化が出てきたら注意が必要です。

流行時期

流行はもともと秋ごろから早春となっていましたが、2021年以降は春から夏にかけて流行しています。
そのため今後も変動していく恐れがあるため幼稚園や保育園、自治体からの情報に注意してください。
過去の発生状況は国立感染症研究所RSウイルス感染症疫学情報から確認できます。

感染経路

主に接触感染と飛沫感染で感染が広がります。
接触感染は、RSウイルスに感染している人との直接の接触や、感染者が触れたことによりウイルスがついた手指や物品(ドアノブ、手すり、スイッチ、机、椅子、おもちゃ、コップ等)を触ったり、なめたりすることで感染します。
また、飛沫感染は、RSウイルスに感染している人が咳やくしゃみ、あるいは会話などをした際に口から飛び散るしぶきを浴びて吸い込むことにより感染します。

見分け方

軽症の場合

基本的には風邪の症状と変わらないため、症状の出始め(軽症)の場合は検査しない限り見分けることはできないと思ってください。
発熱、咳、鼻水などの風邪に似た症状が出た場合には、幼稚園や保育園に「RSウイルスの子供がいないか」もしくはその他の感染症が報告されていないか確認のうえ、病院に行きましょう。

病院に行った場合でも1歳以上の子供は自費検査になるため注意が必要です。
治療も通常の風邪と同じ症状を抑えるための対症療法となるため、医師の方に診てもらい症状が重くなければ検査を無理にする必要はないかもしれません。

重症の場合

重症の場合は下記症状が出ているはずなので、軽症の時に病院に行ったとしても再度受診、呼吸ができていないなどの場合は救急車を呼ぶなどの対応を必ずしてください。
特に生後1か月未満の赤ちゃんが感染した場合、無呼吸による突然死のリスクもあるため、子供のサインを見逃さないことが重要です。

  • ひどい咳
  • ゼーゼー、ヒューヒューした咳や呼吸
  • 呼吸困難
  • 哺乳力、食欲の低下
  • 咳による嘔吐

罹患したら家でしてあげられること

病院で処方された薬を正しく服用させるほかに、水分補給・睡眠・栄養補給・保温に気をつけて、安静にさせてあげることが重要です。
咳でなかなか眠れないことや、母乳やミルクが飲めない、咳による嘔吐で栄養と水分の補給ができない場合もあるため、状況に合わせて下記の対応をしてあげてください。

  • 母乳やミルクなどをこまめに飲ませる
  • おかゆや野菜ゼリー、果物など食べやすいものをあげる
  • 部屋を加湿する
  • 水分が足りない場合は、子ども向けのイオン飲料や経口補水液など電解質を含んだ飲み物を飲ませる
  • 咳がひどい場合には横向き、もしくは上体を少し起こした姿勢で寝かせる
  • 熱が高く眠れない場合には座薬の解熱剤を使用する

他の家族にうつさないためにできること

子供が病気になったとき家族内でパンデミックが発生するのはよく聞くところですが、実際問題として看病をする親にもうつってしまった場合、看病だけでなく仕事面や日常生活にも影響が出てしまいます。
とはいえ、病気の子供を隔離してほっておくなんて親としても人としてもあり得ないことなので、下記に注意しながらリスクを最小限にしながら看病をしましょう。
RSウイルスの感染経路は飛沫感染接触感染のため基本的な対応だけでもかなり防げるようです。

  • マスクの着用と交換を徹底
  • 子供に接したあとや、使ったものを片付けた際に手洗いうがいの徹底
  • 衣類にも付着するため、適度な着替えや同じタオルを使わない
  • 子供が使ったものを消毒用アルコールで消毒
  • 自身の体調管理に気をつける

予防接種

RSウイルスの予防接種は主に3種類あり、シナジス、ベイフォータス、アブリスボですが、いずれも感染、重症化のリスクを下げることが目的となります。
それぞれ打てる対象が異なるため、紹介します。
※本サイトの趣旨と異なるため高齢者向けの情報は記載しません。

シナジス

重症化を防ぐのを目的としたRSウイルスに効果がある抗体成分を精製したもので、予防接種との間隔を考慮する必要はなく、同時接種も可能なため他の予防接種スケジュールを変更する必要はないようです。
対象となる子供が限定的で、理由としては重症化のリスクが高いかどうかです。

対象者

対象となる子供は早産、疾患などがある場合のみとなり、下記のいずれかに該当する子供が対象です。
対象外の子供は自費でも受け付けている病院はあるようです。
※早産や疾患などがない場合は重症化の割合が低いため、対象外となっているようです。

  • 在胎期間28週以下(28週6日まで)で出生してた方で接種開始日時点で12か月齢以下(13か月齢未満)
  • 在胎期間29週~35週(35週6日まで)で出生した方で接種開始日時点で6か月齢以下(7か月齢未満)
  • 血行動態に異常のある先天性心疾患があり接種開始日時点で24か月齢以下
  • 免疫不全があり接種開始日時点で24か月齢以下
  • ダウン症候群があり接種開始日時点で24か月齢以下
  • 肺低形成があり接種開始日時点で24か月齢以下
  • 気道狭窄があり接種開始日時点で24か月齢以下
  • 先天性食道閉鎖があり接種開始日時点で24か月齢以下
  • 先天代謝異常症があり接種開始日時点で24か月齢以下
  • 神経筋疾患があり接種開始日時点で24か月齢以下

効果期間・接種タイミング・回数

効果は約1か月となり流行前にうちはじめ、流行期間中は毎月投与する必要があります。
近年では流行時期の変動もあるため対象となる子供がいる場合は、事前に医師に相談のうえ、開始タイミングを決めておくことが重要です。

費用

対象の子供は基本的に保険が適用されますが、一部病院では自費での対応も行っているようです。
自費の場合は1回10万円程度となっているようです。
毎月打つ必要があるため、数十万は必要になります。
※自治体での助成金などはお住いの役所にご確認ください。

ベイフォータス

シナジスと同じく、RSウイルスに効果がある抗体成分を精製したもので、違いは効果が約5か月程度持続し、1シーズンに1回のみの接種となります。
シナジスと同じく予防接種との間隔を考慮する必要はなく、同時接種も可能となっており、他の予防接種スケジュールを変更する必要はないようです。

対象者

基本的にシナジスと同様の子供が対象ですが、肺低形成、気道狭窄、先天性食道閉鎖症、先天代謝異常症、神経筋疾患を有する 24 か月齢以下の子供は保険適応外となる特徴があります。

  • 在胎期間28週以下(28週6日まで)で出生してた方で接種開始日時点で12か月齢以下(13か月齢未満)
  • 在胎期間29週~35週(35週6日まで)で出生した方で接種開始日時点で6か月齢以下(7か月齢未満)
  • 血行動態に異常のある先天性心疾患があり接種開始日時点で24か月齢以下
  • 免疫不全があり接種開始日時点で24か月齢以下
  • ダウン症候群があり接種開始日時点で24か月齢以下
  • 過去6ヵ月以内に慢性肺疾患の治療を受けた24ヵ月齢以下

効果期間・接種タイミング・回数

シナジスとは違い、効果が約5か月程度持続するとされ、1シーズン1回の接種で対応が可能です。
接種のタイミングは流行前のため医師と相談をしてください。

費用

対象の子供は基本的に保険が適用されますが、一部病院では自費での対応も行っているようです。
自費の場合は目玉が飛び出す1回50万~100万円程度となっているようです。
※自治体での助成金などはお住いの役所にご確認ください。

アブリスボ

妊娠中に接種して母体のRSウイルスに対する中和抗体価を高めて、その抗体が胎盤を通して胎児に移行することで、出生時から乳児のRSウイルス感染、感染による重症下を予防する母子免疫ワクチンです。
母体でできた中和抗体が胎盤を通して胎児にわたることで胎児もRSウイルスへの免疫を獲得できます。

対象者

子供には接種ができず、対症は妊娠されている方が対象となります。
対象の妊娠週数ではない場合でも、状況により接種できる可能性もあるため、医師と相談して決めてください。

  • 妊娠24~36週の妊婦さん

効果期間・接種回数

接胎児への免疫定着まで2週間程度、効果持続が6か月程度と言われています。
接種回数は1回のみとなっています。

保険適用

アブリスボは保険適用外です。
すべて自費になり、4万円弱としている病院が多くみうけられます。

幼稚園・保育園の出席停止

RSウイルスに感染しても、保育園を何日休まなければいけないという明確な基準はないようですが、幼稚園や保育園によっては、感染拡大防止の観点から出席停止期間を独自で設けている場合もあるため、事前に確認しておきましょう。
また、明確な規定なない場合でも体調の悪い状態やRSウイルスに感染している状態で子供や園にも多大な負担をかけるため、医師と相談して体調がよくなるまで、もしくはうつりにくくなるまでは園をお休みするようにしましょう。

登園許可書

園によりルールが若干異なる場合がありますが、多くの園では感染症にかかった場合は、登園許可書が必要になります。
医師のサインが必須の園である場合は、事前に病院へ伝えておくとよいでしょう。
医師のサインが不要の場合は親が記入する必要があるため、忘れずに園のテンプレートを確認しておくようにしてください。

まとめ

RSウイルスは2歳までに罹患率ほぼ100%という驚異的な感染症ですが、ほとんどが風邪症状のため、過度に心配する必要はないですが、重症化した場合の特徴は必ず把握するようにしてください。
2024年6月現在は特効薬がないため、対症療法で回復を待つ形になりますが、そのため重症化のサインに気が付けないと手遅れになってしまう場合もあるようです。
とくに、小さく生まれた、早産、肺や心臓の疾患がある場合や、子供が1歳未満(とくに生後6か月未満)の場合は重症化のリスクが高いため注意しましょう。

家族間で子供の状況を共有も重要です。
ママやパパの片方だけに負担がかかりすぎないように配慮をして、家族で協力し合って乗り越えてください。
例えばマスクや消毒用のアルコールの補充、買い出し家事などは仕事しながらでもできます。
仕事が休めない場合でも非常時であると意識して、家族のために何ができるのかよく考えて行動してください。

子供のRSウイルスについて、知らずに後悔する人が少しでも減るように祈っています。