【夏休み明けには気をつけて】夏休み明けに子供が引きこもってしまう?原因と家庭でできる対策

子育て・出産

子育て中の皆さんお疲れ様です。
子供達は夏休みを満喫していますが、8月で夏休みが終わる地域も多いと思います。
夏休みが終われば、いざ新学期。
しかし、現実には「学校に行きたくない」「朝になるとお腹が痛くなる」と訴える子供が少なくありません。
なかには、自室に閉じこもってしまい、家族との会話も減り、「引きこもり」のような状態になってしまうケースもあります。

今回はなぜ夏休み明けに子供が引きこもってしまうのか?その予兆と家庭で出来る対策について解説していきます。

なぜ「夏休み明け」が危険なのか?

文部科学省の調査によれば、夏休み明けに「全く学校に行かない/ほとんど行かない」と回答した児童・生徒は、小学生・中学生ともに全体の約4割存在するとされています。
また、同じく文部科学省の統計(2022年度)によると、小中学生の自殺は9月1日が最も多いことが過去10年以上にわたって明らかになっています。
さらに、2023年には不登校の小中学生が過去最多の約29万人に上りました。

夏休みが明けることで、子供は再び「学校」という社会に戻らなければならず、それが大きな心理的負担となっていることも要因となっています。

学校生活への不安やストレス

夏休みの間は学校生活から離れられるため、「学校に行かなくていい」状態が子供にとって一時的な解放になります。
しかし、その反動で、再び学校が始まるときに「行きたくない」という感情が一気に噴き出すことがあります。

この背景には、いじめ、人間関係のストレス、勉強についていけない不安などがあり、これらは「学校不安(School Refusal Behavior)」と呼ばれており、とくに感受性の高い子供や内向的な性格の子供は、休暇後の再適応に強いストレスを感じやすい傾向があります。

また、心理学者スーザン・スワールらによる2001年の研究では、いじめ経験のある子供はうつ的傾向や対人不安を抱えやすく、学校に戻ること自体が精神的トラウマになるとされています。
夏休みの間に一度リセットされた心が、新学期と同時に「過去の傷」を再体験してしまうのです。

ケース

  • クラスで無視されていた
  • トイレや給食でからかわれた
  • 担任との相性が悪く、話しかけられるのが怖い
  • 勉強が遅れていて授業についていけない

生活リズムの乱れが心身のバランスを崩す

夏休み中は、就寝・起床時間が遅くなり、昼夜逆転のような生活を送る子供も多くなります。
「体内時計」が乱れると、睡眠の質が低下し、起床困難やだるさ、集中力の低下などが起きてしまい、それが原因となり心身のバランスを崩してしまいます。

睡眠研究の第一人者であるマシュー・ウォーカー博士の研究でも、「十分な睡眠がとれないと、前頭前皮質の働きが鈍り、判断力や感情制御が著しく低下する」と述べられています。

ケース

  • 朝起きられず遅刻
  • 起床時に「お腹が痛い」「気持ち悪い」と訴える
  • 朝食がとれず、低血糖気味で元気が出ない
  • 寝不足で集中力がなく、学校生活に耐えられない

家庭が「安全すぎる場所」になっている

家庭が安心できて、安全だと思えることは素晴らしいことですが、依存し過ぎるのはよくありません。
夏休み中、家で家族とゆったり過ごす時間が長かった場合、学校と家庭のギャップが心理的な負担になってしまう場合があります。
とくに親が共働きでなければ、子供にとって「家は気を使わず過ごせる唯一の場所」になります。

心理学者ジョン・ボウルビィの愛着理論によると、子供は「安全基地」があることで外の世界に挑戦できます。
しかし、安全基地(=家庭)への依存が強まりすぎると、外の世界に出ること自体が不安になってしまいます。

ケース

  • ゲームや動画など自由な時間を満喫していた
  • 家では誰にも叱られず安心して過ごせていた
  • 朝起きられなくても誰も強く叱らなかった

ゲーム・SNSへの依存が高まっている

今の時代、どうしても長期休み中に増えるのが、ゲーム・SNS・YouTubeなどへの接触時間です。
現実の人間関係よりも、ネット上でのやりとりが楽しく感じられるようになると、学校という「対人ストレス」の強い場所に戻ることが苦痛になります。

厚生労働省(2022年)の報告書では、ゲーム依存傾向がある子供ほど不登校や引きこもりとの関連が強いとされています。
これは、「即時の快感」「自己選択の自由」など、デジタル空間が脳に与える影響が大きいためとされています。

ケース

  • ゲーム内の友達と毎日やりとりしている
  • 学校よりもオンラインの関係に居場所を感じる
  • SNSで自分の意見を表現することに慣れ、リアルの会話が億劫になる

発達特性が背景にある場合も

見た目には普通に見える子供でも、実はASDやADHD、HSCなどの特性を持っていることがあります。
これらの子供達にとっては、学校の音・人・時間の流れ・集団行動といった刺激が非常に強いストレスになります。

日本児童青年精神医学会(2021年)は、発達特性を持つ子供ほど登校刺激に敏感で、環境調整が必要であると報告しています
夏休み中に刺激の少ない生活に慣れると、学校に戻ることで「過剰な刺激」が一気に襲ってくることで、登校拒否になってしまう場合があります。

ケース

  • 教室のざわざわした音がつらい
  • 先生の指示が一度で理解できない
  • 自分のペースで行動できないことに強い不安を感じる

子供が見せる「引きこもり」の予兆は?

引きこもりの要因はどの子供でも起こりえる内容ばかりですが、その要因のほとんどはママやパパからは見えにくいものばかりです。
しかし、引きこもってしまう前に、子供の行動に予兆がある場合もあるため、注意深く観察してみましょう。
以下のようなサインが見られたら注意が必要です。

  • 登校の準備に手がつかない
  • 学校の話題に反応しない・嫌がる
  • 朝起きるのが極端につらそう
  • 昼夜逆転のような生活になる
  • 頭痛や腹痛を頻繁に訴える
  • ゲームや動画に没頭し、外出しなくなる
  • 無表情・無口になる、目を合わせない

一見すると、子供が夏休みを惜しんでいたり、ただサボりたいだけのようにも見えますが、これらは「サボり」ではなく、心のエネルギーが限界に近づいていることを示している場合が多いため、注意してください。

家庭でできる対策

夏休みが明けても、子供には元気に学校へ登校してほしいと考えるママ・パパは多いと思います。
夏休み中に家庭でサポートをすることで、子供たちも安心して登校できるようになる可能性はグッと上がります。
ここでは家庭で出来るサポートを解説していきます。

睡眠のリズムを整える

まずは体の土台を整えることから始めてみましょう。
子供が自分で生活リズムを調整するのは難しいため、保護者が夏休みが終わる1〜2週間前から徐々に就寝・起床時間を早めていくサポートが効果的です。
また、起床後すぐに朝日を浴びることでセロトニンが分泌され、夜のメラトニン分泌が促進されるため、自然な入眠が促され、生活リズムが安定していきます。

睡眠時間の確保も重要です。
国立精神・神経医療研究センターの研究では、子供の睡眠不足がうつや不登校と関連することが示されているため、子供の年齢に合わせて1日8~10時間の十分な睡眠が推奨されています。

具体策

  • 起床時間と就寝時間を毎日15分ずつ学校モードに近づける
  • 朝日を浴びて体内時計をリセット(メラトニン分泌が抑制され、覚醒が促される)
  • 寝る前のスマホやテレビを避ける(ブルーライトが睡眠を妨げる)

学校の話題を自然に出す

不安を軽減するための事前準備として、学校の話題を家庭で話すのも効果的です。
長期休暇の後は、再び学校生活に戻ることに不安や緊張を感じやすくなるため、何をするかをイメージできるような話題を出すことで事前準備ができ、夏休み明けに何をするのかを分かっていると、子供は安心することが出来ます。

心理学者バンデューラ氏の「自己効力感理論」でも、予測可能な状況にあると自己効力感が高まり、行動への意欲が増すとされています。

具体策

  • 通学路を一緒に歩いてリハーサルしておく
  • 学校で再会する友達の話をする(例:「〇〇ちゃんと何して遊ぶ?」)
  • 新学期の行事についてポジティブに語る

感情に寄り添い、受け止める

もしも子供が夏休み中に「学校に行きたくない」と子供が言ったときに、「何言ってるの!行かなきゃダメでしょ!」と否定せず、気持ちをまずは受け止めてあげてください。
ママやパパの学校に行ってほしいという気持ちもあると思いますが、感情的に否定をしてしまうのではなく、子供の不安や嫌な気持ちを否定せずに聞くことに注力することが重要です。

臨床心理学者ダニエル・シーゲル氏の「Name it to tame it」理論では、感情を言語化することで脳の感情の調整システムが活性化され、ストレスが軽減されると述べています。
そのため、子供が不安や嫌な気持ちを言葉にしてママやパパに話すだけでも、登校へのストレスが軽減されます。

具体策

  • 解決しなくても、話を聞くだけで落ち着くことが多い
  • 「行きたくないんだね。何が嫌なのか教えてくれる?」と共感する
  • 「それは不安になるよね」と感情を言葉にしてあげる

ママやパパの不安を子供にうつさない

忘れてはいけないのが、保護者自身の心の余裕です。
子供が学校に行けないことで、自分の育て方を責めてしまうママやパパも少なくありませんが、これは誰にでも起こりうることです。
ママやパパが「不登校になるのでは?」と不安に思っていると、知らず知らずのうちにそれが言葉や態度に出てしまい、子供にもプレッシャーを与えてしまうこともあります。

具体策

  • 自分自身の不安はパートナーや相談機関に共有し、子供にぶつけない
  • 子供の様子を見守る姿勢をとる(焦って登校を強制しない)
  • 「行ってくれないと困る」ではなく「どんな気持ちか教えてくれると嬉しい」など共感的な言葉を使う

専門家の力を借りる

長期化や悪化が見られる場合は、専門家の力を借りることも大切です。
子供だけではなくママとパパの不安や精神的負担を和らげる意味でも、スクールカウンセラー、チャイルドカウンセラー、児童精神科、発達相談センターなどの利用を検討してみてください。

まとめ

子供が学校に行けなくなり、引きこもってしまうのは、決して「甘え」や「わがまま」ではありません。
むしろ、心がこれ以上傷つかないようにブレーキをかけているサインでもあります。
大人ができることは、「引っ張る」ことではなく、「寄り添ってあげる」こと、子供のペースで一歩ずつ進んでいけるよう、安心できる居場所を守ることです。
夏休みが明けるまでに子供に予兆が現れたら、ぜひ家族でサポートをしてあげてください。