【ママ・パパの悩みのタネ】子供の癇癪はいつまで続くの?改善方法は?

子育て・出産

子育て中の皆さんお疲れ様です。
皆さんの癇癪を経験したことがありますか?
子育てをしていれば、ほとんどの場合避けては通れない道だと思います。
そして、ママやパパの悩みのタネになりやすくもあります。

大人からしてみると「どうしてそんなことで泣くの?」「もう少し落ち着いてほしい」と思う一方で、怒ってしまい自己嫌悪に陥る負の連鎖が起きることも多いのではないでしょうか。
しかし、癇癪は子供の脳や心が成長している証でもあります。
今回は発達段階ごとの癇癪の特徴と改善・予防方法、そしてNG対応までをわかりやすく解説していきます。

発達段階で癇癪なぜ必要なの?

子供が癇癪を起すと本当に大変ですよね。
でも、癇癪は子供の成長の一部であり、ほとんどの場合は自然な過程で起こることであり、発達心理学や脳科学の研究では、癇癪がどのように発達と関係しているのかが明らかになってきています。
ここでは、なぜ癇癪が発達段階において必要なのかについて解説していきます。

自己主張と自我の芽生えを育む

2歳前後から始まるイヤイヤ期も一つの癇癪です。
これは「自分」と「他人」を区別できるようになる脳の発達が背景にあります。
2010年のアメリカの発達心理学者 カーペンター氏 の研究によると、子供が「やりたいこと」と「やらなければならないこと」の違いを認識し始める時期に、感情の爆発として癇癪が出やすくなることが示されています。
癇癪は自分の意志を表現しようとする自然な行動で、自己主張力や自己決定感を育む基盤となるのです。

感情のコントロールを学ぶ練習

癇癪は、子供が強い感情に対処する力(情動調整能力)を育てるための練習でもあります。
カナダの神経科学者であるシーゲル氏の脳科学研究では、子供は感情をつかさどる扁桃体が活発で、理性をつかさどる前頭前皮質の働きが未熟なため、感情の爆発を抑えることが難しいことが示されています。
癇癪を経験しながらママやパパなど周りの適切なサポートを受けることで、少しずつ「気持ちの切り替え方」や「言葉で気持ちを伝える方法」を学んでいきます

親子の信頼関係を深めるきっかけ

癇癪を起こした後にママやパパが落ち着いて受け止めてあげる経験は、「安全基地(secure base)」を形成するうえで非常に重要です。
イギリスの発達心理学者であるボウルビィ氏の愛着理論では、子供が困難な感情を抱えたときに親がそばで支えてくれる経験が、安心感と信頼感を育むとされています。
この信頼感があることで、子供は次第に感情を自分で整理できる力を伸ばしていきます

認知能力や言語能力の発達にも影響

癇癪を通じて「自分の気持ちを表現したい」という欲求が強まることで、言葉やコミュニケーション能力の発達が促されます
アメリカの心理学者であるバロン氏の研究では、ママやパパが癇癪の際に子供の気持ちを言語化してサポートすることで、語彙の発達が早まる傾向があることが報告されています。

年齢別の癇癪の理由と頻度

発達段階による癇癪では、年齢ごとに癇癪を起す回数は徐々に減っていきます。
年齢ごとに癇癪を起しやすい主な理由と頻度は異なっていきますが、ここでは発達段階で起こる癇癪について年齢別に解説していきます。

幼児期(1〜3歳)

最も癇癪が多く見られる時期です。アメリカのバロン氏らの2002年に行われた研究によると、1歳半から2歳にかけて癇癪が急増し、2歳前後でピークを迎えることがわかっています。
この時期は「イヤイヤ期」とも呼ばれ、脳の前頭前野が未発達で感情をコントロールできないため、些細なことでも爆発してしまいます。
この時期の癇癪を起す頻度は、日に数回~週に5〜7回程度とされていますが、個人差があるため回数が多くてもあまり気にする必要はありません。

幼児後期(4〜5歳)

徐々に言葉や思考力が発達し、癇癪の頻度は減っていく傾向にあります。
癇癪を起す理由は、この時期は「自分の思い通りにしたい」という気持ちが強く、兄弟や友達との関係でぶつかることや悔しさなどがあります。
研究によれば、この時期に癇癪を週3回以上起こす子供は約10%程度であり、多くは落ち着き始めるとされています。

学童期(6歳以降)

小学校に入るころには感情を調整する力が高まり、癇癪は大きく減少していきます。
疲れやストレスが強いと再び強い感情爆発が見られることもありますが、月に数回から徐々に減っていき、9歳までには年に1回以下~数回程度とかなり少なくなってきます。
反対にこの時期以降にも頻繁に癇癪を起す場合は、特定の機関に相談してみましょう。

癇癪の改善方法

癇癪を完全になくすことは難しいですが、ママやパパ、周りの大人の対応次第で頻度や激しさを減らすことは可能です。
ここでは科学的にも効果的とされている方法を解説していきます。

感情を言葉にするサポート

癇癪を起す理由に感情表現の側面もあるものの、感情を言葉にすることが難しいと理由で癇癪を起してしまう場合もあります。
そのため、ママやパパが子供の感情を代弁してあげることで、子供は「自分の気持ちは理解されている」と感じ、落ち着きやすくなります
また、心理学者であるゴットマン氏の「感情コーチング理論」では、親が子供の感情を認め、言葉にしてあげることが情緒安定に役立つとされています。

  • 「悲しかったんだね」
  • 「悔しい気持ちが大きかったんだね」

ルーティンの安定

睡眠不足や空腹などは癇癪を誘発してしまう場合があります。
決まった時間に睡眠をとったり、決まった時間にしっかり食事をとるなどの規則正しい生活リズムを整えてあげることで、癇癪を起す頻度は減っていきます
研究によれば、就寝時間が一定している子供は、そうでない子供よりも癇癪の頻度が少ないことが報告されています。

選択肢を与える

子供が癇癪を起こす大きな理由の一つに、「自分の思い通りにできない」ことへの強い不満があります。
「やるか・やらないか」ではなく、「どちらにする?」と選択肢を与えると、「自分で選んだ」という感覚が生まれ、自己決定感が満たされるため、気持ちが落ち着きやすくなります。
デシ氏とライアン氏の自己決定理論によると、人は「自分で選んだ」という感覚があることで、動機づけや情緒の安定が高まることが実証されています。

  • 「この服とこの服、どっちを着たい?」
  • 「片付けは今やる?それとも5分後にやる?」

癇癪が起きた後にできる3つの改善方法

発達段階において癇癪が起きてしまうのは避けられませんが、癇癪の後の対応次第で、次の癇癪の激しさや頻度が変わることが研究で示されています。
ここでは癇癪が起きた後に出来る改善方法を解説していきます。

冷静に対応する

子供が癇癪を起すと、焦ってしまったりイライラしたりする、ママやパパも多いと思います。
しかし、ママやパパが怒っていたり、オロオロしていると癇癪を起した子供も落ち着かないので、落ち着いた態度で冷静に対応をしてあげましょう。
神経科学者シーゲル氏によると、親が落ち着いた態度を示すことで、子供の神経系も落ち着きやすくなるそうです。
ママやパパも落ち着くために、深呼吸や少し距離を取るなどして、冷静さを保つようにしてみましょう。

行動の振り返り

自己認識力を育てたり問題解決力のトレーニングとして、癇癪が収まったあとに子供と一緒に振り返りを行うのも効果的です。
前頭前野の発達がまだ未熟なため、「自分がなぜ怒ったのか」「どんな行動をしたのか」を認識するのが難しい時期でもあり、感情に言葉を与えて整理する「ラベリング」を繰り返すことで、前頭前野の活動が促進されていきます

また、振り返りは感情の整理だけでなく、「次にどう行動すればいいか」を考える機会にもなります。
行動科学では、過去の行動を分析し、次の行動を具体的にイメージすることが改善への近道だとされています。

声掛け例

  • 「さっきはブロックを片づけたくなくて怒ったんだよね」
  • 「あのときどうしてあんなに怒ったのかな?」
  • 「次はどうしたらよかったと思う?」

小さな成功を褒める

癇癪の最中ではなく、「落ち着きを取り戻せたこと」をしっかり褒めてあげることで、脳内で「ドーパミン」という神経伝達物質が分泌されます。
ドーパミンは「うれしい」「もっとやってみよう」というモチベーションを高めてくれるため、「落ち着く=いいことがある」という経験として脳に刻まれ、次に同じ場面が起きたときにより落ち着いた対応を取りやすくなります。

また、子供は褒められることで「自分でもできた」という成功体験が積み重なり、自己効力感も育ちます。
この自己効力感は、心理学者アルバート・バンデューラ氏が提唱した概念で、「次も頑張ってみよう」という意欲の源にもなるモノです。

声掛け例

なるべく具体的に褒めてあげることが声掛けのコツです。
漠然と「えらい」「すごい」などではなく「○○できてえらい」「○○がしてくれてすごい」などできたことと褒め言葉を組み合わせて使いましょう。

  • 「さっき、自分で深呼吸してえらかったね」
  • 「泣き終わった後におもちゃを片付けられたの、すごいね」
  • 「泣かないで言えたのがすごいね」

癇癪を起す前にできる3つの予防策

癇癪は成長の過程で起こるモノですが、頻度を減らすための予防をすることは可能です。
事前に予防をすることで、ママやパパだけでなく、周りの人にかかる負担も抑えることが出来ます。
ここでは、予防方法について解説していきます。

事前に見通しを伝えておく

先が見えない不安から癇癪を起す場合もあります。
そこで、例えばご飯の時間や今日はどこどこに行くよなど、事前に予定を伝えておくことで、この不安から起こる癇癪を予防することが出来ます。
発達心理学の研究では、「これから何が起こるのか」を事前に説明することで、不安が減り癇癪も起きにくくなることが分かっています。

声掛け例

  • 「あと10分でお風呂に入るよ」
  • 「今日は帰りにスーパーに寄るよ」

ストレス発散の機会を確保

子供の脳はまだ未発達な部分が多く、とくに「嫌だ」「悔しい」といった強い感情を処理する能力が未完成です。
心理学者のシーゲル氏らの研究では、遊びや運動といった身体的活動が情動調整をサポートし、イライラや不安を減らす効果があることが示されています。

ストレス発散活動の中で「できた!」という小さな達成体験を積むことは、自己効力感を高めてくれます。
この自己効力感が育つと、日常生活でストレスを感じても「自分ならなんとかできる」という前向きな気持ちが生まれ、癇癪を起こしにくくなる傾向があります。

3. 親子の安心時間を持つ

1日5分でも構いません。「ただ一緒に遊ぶ」「ぎゅっと抱きしめる」などのスキンシップは、子供の安心感を高め、癇癪の予防に繋がります。
子供は、安心できる大人との時間を通じて「自分は大切にされている」という感覚(自己肯定感)を育てます。
発達心理学者のボウルビィ氏が提唱した愛着理論によれば、親子の安定した愛着関係はストレスに対する耐性を高め、日常の不安や怒りを和らげる基盤となるとされています。

また、安心時間の中で、親が落ち着いた態度や穏やかな声かけを続けることで、子供はその「落ち着き方」を学びます。
心理学の社会的学習理論でも、子供は親の行動を観察し、まねて習得するとされており、ママやパパがリラックスした状態で子供と関わること自体が、「癇癪を起こさず感情を整理するスキル」を自然に教える機会になります。

癇癪を起こす子供へのNG対応

癇癪を起す子供への対応にもNG行動は存在していますので、知っておきましょう。

叱責や怒鳴り声で制圧する

大声で怒鳴ったり、厳しく叱責することで、子供は「恐怖」によって行動を止めることはあっても、感情の整理や表現方法を学ぶことはできません
この方法を続けると、子供は親に対して「安全な存在」という信頼感を持てず、情緒不安定や攻撃的行動が増えるリスクが高まり逆効果になってしまいます。

ガーナー氏の研究では、親が怒鳴る、叩くなどの厳罰的対応を続けた子供は、不安・攻撃性・反抗行動が増える傾向があると報告されています。
また、アメリカ心理学会でも、体罰や怒鳴り声を含む厳罰的しつけは、子供の精神的健康に悪影響を及ぼすと警告しています。

無視して放置する

「癇癪=悪いことだから完全に無視」という対応は、子供に「感情を共有してもらえない」「理解してもらえない」という無力感を与えてしまいます
その結果、情緒の自己調整がさらに難しくなり、癇癪が長期化・悪化する可能性があります。

アインズワース氏の愛着理論に基づく研究では、子供が不安なときに適切なサポートを得られないと、不安型または回避型の愛着スタイルが形成されやすくなるとされています。
また、ブレア氏の研究でも、親が感情サポートをしない家庭環境は、子供のストレス反応を高め、情緒の自己制御力を低下させることが報告されています。

過度な要求を押し付ける

子供が癇癪を起こしているときに、「いい加減泣きやめなさい」「大きい子なんだから我慢しなさい」と言ったり、感情を抑え込ませる指示を出すことは、言いたくなる気持ちもわかりますが逆効果となってしまいます。
子供が自分の感情を理解したり、適切に表現する機会を奪ってしまうことで抑圧を強めてしまいます

デナム氏らの研究では、感情を認められない子供は自己調整力の発達が遅れ、情緒不安定な行動が増えることが指摘されています。

ご褒美で気をそらす

「泣き止んだらお菓子をあげる」「静かにしたら動画を見せる」という行動は、短期的には癇癪を止められても、「癇癪を起こせば要求が通る」という悪い方向への成功体験を積んでしまいます
その結果、癇癪が長期的にエスカレートしたり、操作的行動として定着してしまうリスクがあります。

行動心理学のオペラント条件付け理論でも、癇癪後にご褒美が与えられることで「癇癪=有効な手段」として強化されやすいとされています。

家族や他人と比較する

「お姉ちゃんは泣かないのに」「お友達はちゃんとできてるよ」といった比較は、子供の自己肯定感を著しく傷つけてしまいます
この対応を繰り返すことで、癇癪を起こしたときの恥や劣等感が増し、かえって自己表現が乱暴になることがありますし、自己肯定感が下がることにより、癇癪以外にも新しいことへの挑戦や学習への意欲なども下がってしまう危険性があります。

ハーター氏の自己評価理論では、他者との比較による否定的評価は子供の自己効力感を下げ、情緒的問題や行動問題につながると示されています。

ママやパパが不安定な態度を取る

癇癪に対して、あるときは優しく受け止め、別の日は感情的に怒るなど対応が一貫しないと、子供は「どう対応されるかわからない」という不安を抱えてしまいます
この不安が、さらに癇癪の頻度や強度を増加させる原因にもなってしまうため、わかりやすく一貫した対応をとるようにしましょう。
トラブルの種類や大きさ、質によって対応を変えるのであれば、事前に説明をしてわかりやすくしておきましょう。

メイン氏らの愛着研究では、親の反応が不安定だと「不安型愛着」が形成されやすく、感情コントロールが難しくなることが示されています。

まとめ

癇癪は「成長のサイン」であり、決して「親の育て方が悪い」わけではありません。
子供の癇癪で悩んでいる方は「誰にでも癇癪はある」と肩の力を抜きながら、今回の改善や予防方法を試してみてください。
それでも心配で「癇癪の頻度が高い」「自称行為や破壊行為」などがある場合には専門機関に相談をしてみましょう。

子供にとって成長の過程である癇癪ですが、大人にとってその対応はなかなか難しいこともあると思いますが、一番大切なのは癇癪を理解して寄り添ってあげて、子供が安心できる環境を作ることです。
そのためにも、ママやパパのストレスケアも大切になってきます。
今回解説した内容も、ママやパパ自身が大きなストレスを抱えている状態ではうまくいきません。
しっかりとストレスケアを行いながら、パートナーとも協力してどちらか一方だけに負担がいかないように家族で取り組んでみてください。