【気になる話を調べてみた】発達障害は増えている?親のせい?

子育て・出産

子育て中の皆さんお疲れ様です。
最近ニュースやSNSを見ていると発達障害の子供が増えていて、教育現場の人も増えたように感じるという話をよく目にします。
その中には親のせいとするような内容もあったりなどで、内心モヤモヤしていました。
そこで今回は発達障害についてと、昔と比べて発達障害は増えているのか、親の関与が原因になっているのかについて、データを交えながら解説していきます。

目次

発達障害にはどんな分類があるのか

発達障害とは、生まれつきまたは幼少期からみられる脳の働き方や情報処理の特性により、学習・行動・社会性の発達に違いが生じる状態の総称とされています。
病気というよりも「脳の特性」としてとらえられ、国際的にもICD(国際疾病分類)やDSM(米国精神医学会診断基準)で分類されています。
ここではどのような特性が発達障害とされているのか、その特徴について簡単に解説していきます。

自閉スペクトラム症(ASD)

社会的コミュニケーションの困難と、限定された興味・反復的な行動や感覚の違いを持つ状態。
軽度〜重度まで幅があります(スペクトラム)。

特徴

  • 対人:目線や表情の読み取りが苦手で会話のキャッチボールが続かない。遊びで並行遊び(並んで遊ぶが相互交流が少ない)になりやすい。
  • 言葉:言葉の発達にばらつき。繰り返し話す、話題が突然変わることがある。
  • こだわり: 決まった順序を強く好み、予定変更で強い不安を示す。
  • 感覚:大きな音や特定の服の触感を極端に嫌がる、逆に鈍感で痛みに気づきにくいことも。

年齢別の出方

  • 幼児期:視線が合いにくい、名前を呼んでも反応が薄い、遊びの幅が狭い。
  • 学童期:友人関係のトラブル、集団行動が苦手。
  • 思春期以降:対人関係の疲弊、感情のコントロール困難から二次症状(不安・抑うつ)を発症しやすい。

診断方法

発達面の聞き取り、観察(ADOSなど)、言語検査、知能検査、感覚評価。

併存しやすい問題

知的障害、ADHD、学習困難、睡眠障害、不安障害。

注意欠如・多動性障害(ADHD)

注意の持続の困難、多動性、衝動性が主な特徴とされています。
大人になっても続くことが多い。

特徴

  • 不注意:忘れ物が多い、指示を最後まで聞けず作業ミスが起こる。
  • 多動:席についていられない、そわそわする。
  • 衝動性:順番が待てない、思いついた行動をすぐにしてしまう。

年齢別の出方

  • 幼児期:落ち着きのなさ、過度の活発さ。
  • 学童期:学業成績のムラ、友人トラブル、宿題や片付けの困難。
  • 成人期:時間管理や対人トラブル、仕事の持続が課題になることがある。

診断方法

行動チェックリスト(保護者・教師)、発達歴、必要に応じて神経心理検査。

併存しやすい問題

学習障害、ASD、反抗挑発性障害、気分障害

限局性学習症(LD / SLD:Specific Learning Disorder)

知的発達には問題がないが、読む・書く・計算など特定の学習分野に著しい困難がある状態。

特徴

  • 読字(ディスレクシア):文字が読みづらい、読み間違いが多い。
  • 書字表出:文字を書くのが極端に遅い、文を書くのが苦手。
  • 算数(ディスカリキュリア):計算ミスが多い、文章題の理解が難しい。

診断方法

学力検査、知能検査との比較(学力が期待水準に達していないかを確認)。

併存しやすい問題

ADHD、ASD、情緒不安定

発達性協調運動症(DCD)

不器用さや運動スキルの著しい遅れ。
日常生活の動作(ボタン、筆記、走るなど)に困難。

特徴

  • 運動の計画や実行が年齢相応の水準より著しく苦手
  • 手先の器用さや体の動かし方にぎこちなさがある
  • 動作が遅い、力の入れ方やタイミングが不適切になりやすい
  • 周囲から「不器用」「よくつまずく」と言われることが多い
  • 失敗体験から運動や作業への意欲低下・自尊感情の低下につながることもある

診断方法

  • DSM-5に基づく診断
    • 運動技能が年齢や学習機会に対して著しく劣る
    • 日常生活・学業・遊びに支障
    • 幼児期から症状が存在
    • 他の医学的障害(脳性麻痺、筋ジストロフィー、視覚障害など)で説明できない
  • 標準化検査例:
    • M-ABC-2(Movement Assessment Battery for Children-2):運動協調性の評価
    • BOT-2(Bruininks-Oseretsky Test of Motor Proficiency):運動能力全般の評価
  • 作業療法士や理学療法士が観察・評価を行う

併存しやすい問題

  • ADHD(特に不注意優勢型)
  • 学習障害(LD)(読み書き・算数の困難)
  • ASD(自閉スペクトラム症)
  • 社会的(語用論的)コミュニケーション症
  • 不安障害・抑うつ(運動面の失敗経験による二次障害)

言語発達障害(言語障害)

発語や言語理解、語用(会話の使い方)が遅れる、もしくは困難がある。

特徴

  • 年齢に比べて言語の発達が遅れる
  • 語彙が少ない、文章が短い、文法の誤りが多い
  • 聞き取りや理解が難しい場合もある
  • 読み書き困難(LD)や社会性の課題につながることもある

診断方法

  • 言語聴覚士による発達検査(例:PVT-R語彙発達検査、ITPA言語学習能力診断検査)
  • 聴力検査で聴覚障害を除外
  • 発達歴・家庭環境・二言語環境などの影響も評価

併存しやすい問題

  • ASD(特に言語発達遅滞型)
  • ADHD
  • 学習障害(読み書き障害)
  • 社会的(語用論的)コミュニケーション症

社会的(語用論的)コミュニケーション症

言語そのものはある程度あるが、文脈に応じた会話の使い方(冗談・暗黙の了解など)が苦手。

特徴

  • 言葉の使い方に関する障害
  • 文章や単語は正しく話せても、会話の文脈や暗黙ルールが理解しにくい
  • 例:順番を守らない、話題を急に変える、冗談や比喩が理解できない
  • ASDに似るが、ASDのような限定的興味や感覚過敏は必須ではない

診断方法

  • DSM-5の基準を使用
  • 標準化された言語検査(例:CCC-2、Pragmatic Language Skills Inventory)
  • 家庭・学校での会話観察
  • 他の発達障害・聴覚障害を除外

併存しやすい問題

  • 言語発達障害
  • ADHD
  • 学習障害(特に読解困難)
  • 社交不安症

チック障害/トゥレット症候群

瞬間的な不随意運動(まばたき、首振り)や音声チック(咳声、叫び)を繰り返す。
トゥレットは複数の運動チック+1つ以上の音声チックが1年以上続くもの。

特徴

  • チック:意思とは関係なく起こる、突発的・反復的な動きや発声
  • 例:まばたき、首振り、肩すくめ、咳払い、鼻鳴らし
  • トゥレット症候群は1年以上続く多様な運動チック+1種類以上の音声チック
  • 症状は周期的に強弱を繰り返す
  • 一時的に抑えることも可能だが、その後強く出やすい

診断方法

  • DSM-5の基準を使用
  • 神経学的診察と観察
  • 発症年齢は18歳未満
  • 他の運動障害・てんかんを除外

併存しやすい問題

  • 不安障害、うつ病
  • ADHD(50〜60%)
  • OCD(30〜50%)
  • ASD

発達障害は増加傾向にあるの?

最初に結論から言うと、診断および支援対象者・可能性のある児童数は確かに増加している状況です。ただし、これは「発達障害の実際の発生が増えた」かどうかとは別に、「診断基準の拡大」「認知の向上」「支援制度の充実」「晩婚化」など複合的な要因が背景にあるとされています。
昔は「やんちゃな子」「変わった子」とされていた特性が、近年では発達障害とわかるようになってきたことが要因のようです。
実際に比較したデータと増加の理由についても解説していきます。

昔と今の比較データ

昔のデータと近年のデータを見比べてみると、確かに増加していることがうかがえます。
以下は実際のデータを簡単に掲載していきます。

診断された発達障害のある人(全年齢)

  • 平成28年(2016年):推計約48.1万人
  • 令和4年(2022年):推計約87.2万人(約1.8倍)

通常学級に在籍し「発達障害の可能性がある」とされた児童生徒

  • 平成24年(2012年):約6.5%
  • 令和4年(2022年):約8.8%

約10年間で2.3ポイント(クラスに2〜3人)の増加
行政情報ポータル

特別支援教育・通級指導の利用状況

  • 特別支援学級在籍者数(小中学校):
    • 2013年度:約17.5万人
      2023年度:約37.3万人(約2.1倍)
  • 通級による指導利用者数:
    • 2013年度:約7.8万人
      2021年度:約18.2万人(約2.3倍)

いずれも10年で2倍以上の増加している状況。(行政情報ポータル)
全体の義務教育段階で特別支援教育を受ける児童生徒数は、2013年度の約32万人(全体の3.1%)から、2023年度には約64万人(6.8%)へと倍増しています。(行政情報ポータル)

障害児支援(福祉サービス)も拡大

  • 障害児通所支援(例:放課後等デイサービス)の利用者数:
  • 障害児(18歳未満)の中で「精神障害児(発達障害含む)」の推定数:
    • 約21.1万人で、10年前と比べて約1.8倍

増加の理由

過去と比べ増加した理由についても調べてみました。
理由として信憑性が高そうなものをピックアップしました。

診断基準の変更

精神障害の診断基準を定めたマニュアルであるDSM-5(2013年)でASDの診断基準が拡大され、ADHDでは症状出現年齢が12歳までに引き上げられ、「軽度・高機能」のケースも診断対象になりました。
医師の診断基準が変更されたことにより、今まで発達障害とされなかった人たちも対象となり、増加した要因の一つとなっているようです。

社会の認知・理解の向上

教育現場や保護者による発達障害の理解が進み、早期診断・支援を求めるケースが増加しています。
過去よりも情報が手に入りやすくなり、発達障害に関する情報を得る機会が増えて、「うちの子ももしかして」と相談するケースが増えているようです。
これは大人になってからも同様で、大人になってからADHDなどの診断を受ける人も増えています。

支援制度の整備

発達障害者支援法(2005年)以降、公的支援の仕組みが整備されてきたことで、支援を受けやすくなっており、今まで相談や診断を受けるのにも躊躇していた方々が、相談しやすい環境が整ってきています。
そのおかげもあって、診断を受ける方も増えることで、増加の要因となってきているようです。

晩婚化

厚生労働省の研究班(2017年)による全国調査では、母親年齢が35歳以上の場合、ASD診断の確率がやや高い傾向があるそうです。
また、複数の研究をまとめたメタ解析によれば、父親の年齢が10歳上がるごとに、子供のASDリスクは約21%増加母親の場合は10歳上がるごとに、子供のASDリスクは約38%増加するそうです。
ただし「年齢が直接原因」というより、年齢以外にもさまざまな要因が絡むため、総合的な判断が必要です。

なぜ「親のせい」という誤解が生まれるのか

私がこの件について調べるきっかけとなった、「親の育て方のせい」という理由についてですが、結論から言いますと「デマ」です。
ただし、ママ・パパの年齢や、妊娠時に喫煙や飲酒などをしている場合、胎児に影響を与えしまうこともあるため、その場合は「親のせい」と言えなくもないですが、あくまで1つの要因であり、発達障害には様々な要因が複雑に絡み合っています。

子供に発達の特性が見られたとき、多くの保護者が最初に抱く不安は「私の育て方が悪かったのではないか」というものがあります。
とくに日本では、昔から「子供の性格や行動は親のしつけの反映」という文化的考え方が根強くあり、そのためママやパパ、周囲の人目に「親の育て方のせい」と映ることも多いのかもしません。

とはいえ、周囲の何気ない言葉や視線が、保護者を追い詰めることがあることを忘れてはいけません。
しかし、実際には医学・心理学の研究は明確に「親の育て方が直接的な原因ではない」と示していますので、この項目ではその点を解説していきます。

発達障害の原因

発達障害の直接的な原因は「遺伝と先天的要因が中心」です。
ここでは科学的根拠に基づいて解説していきます。

遺伝的要因の強さを示す研究

発達障害の研究でよく用いられるのが双子研究です。
一卵性双生児(遺伝子がほぼ同じ)の場合、自閉スペクトラム症(ASD)の一致率は60〜90%、ADHDは65〜75%にのぼることが複数の国際研究で確認されています。
これに対し、二卵性双生児(一部遺伝子が異なる)では一致率が大幅に下がることから、遺伝の影響が極めて大きいことがわかります。

また、ADHDの場合、両親のどちらかにADHD傾向があると、子供がADHDである確率は一般より5〜10倍高いと報告されています。
これは子育ての環境だけで説明できないほど高い数値であり、遺伝的な要因である可能性が高いとされている理由です。

胎児期・出産時の影響

発達障害の発症には、遺伝だけでなく胎児期や出産時の生物学的な環境も影響するとされています。
例えば以下のような環境・状況の場合、リスクがあるとされています。

  • 妊娠中の母体の感染症や高血圧症
  • 喫煙や大量飲酒
  • 早産や低出生体重児
  • 出産時の酸素不足や脳損傷

これらはあくまでリスク要因であり、必ずしも発達障害を引き起こすわけではありませんが、遺伝的要因と重なることで発症の可能性が高まると考えられています。

育児環境単独では発達障害は起きない

研究が進んでいる現在では考えにくいですが、過去には「冷蔵庫マザー仮説」と呼ばれる説(母親の愛情不足が自閉症の原因とする説)がありましたが、現在では完全に否定されています。
数十年にわたる追跡研究で、家庭環境だけで発達障害が生じることはないことが明らかになっています。
これは世界保健機関(WHO)や厚生労働省の公式見解でも共通している内容のため、偏見を持つ人には、情報を正しく理解してほしいですね。

両親の特性と子育てについて

発達障害の原因になりうるものについては解説していきましたが、ママやパパに発達の特性があった場合、子育てをすることで子供の発達に影響があるのかについても解説していきます。

ママやパパにも発達特性があるケース

発達障害は遺伝的要因が強いため、ママやパパにも似た特性が見られることがあります。

  • 親が片づけやスケジュール管理が苦手(ADHD傾向)
  • 親が人付き合いが苦手で情報収集が限定的(ASD傾向)

上記は一例ですが、このような両親の特性が子育てに影響することがありますが、悪影響だけではありません。
むしろ、ママやパパ自信が特性を理解し、子育てに工夫や支援を取り入れることで、子供にとって安心できる環境を作ることが可能です。

育児ストレスと早期発見

ママやパパに発達の特性がない場合でも、育児ストレスが高いと、結果的に「子供の特性に早く気づく」ことがあるそうです。
例えば、「何をしても泣きやまない」「言葉の発達が遅れている」と感じ、早期に専門機関へ相談するきっかけになるケースです。
ストレスは原因ではなく、気づきのセンサーになり得るという視点も重要です。

発達障害児を育てる保護者の心理的負担

自分の子供が他の子供とは違う、SNSなどでは誹謗中傷される可能性もある、ママやパパの心理的負担は非常に大きく、辛いものです。
家庭が抱える心理的負担はそれぞれですが、ここでは実際のデータと一例を踏まえて解説していきます。

抑うつ傾向・ストレス

日本の調査では、発達障害児を育てる母親の約44%が抑うつ傾向にあり、一般的な母親より明らかに高い割合です。
また、日常的に強いストレスを感じていると回答した割合は60%を超えます。
原因としては、以下のようなことがあげられます。

  • 周囲からの理解不足や偏見
  • 学校・園との調整の負担
  • 将来への不安

孤立感と罪悪感

多くのママやパパが「普通にできないのは私のせい」という罪悪感を抱えています。
さらに、周囲からの「しつけが甘い」「もっと厳しくすれば直る」という言葉が追い打ちをかけます。
この孤立感は、支援制度や同じ立場の保護者とのつながりによって大きく軽減されることが研究でも示されています。

まとめ

今回解説したように、発達障害は遺伝や先天的な要因が大きく、育て方が原因ではありません。
もしも、ご自身のお子さんが発達に特性が見られたとしても、喫煙や飲酒などの要因さえなければ、それはママやパパのせいではありません。
むしろ、発達障害を抱える家族や本人を誹謗中傷するような人が現れたならば、その人の親の育て方の問題、もしくは本人の倫理観と情報収集能力の欠如だと無視してください。

ママやパパの関わりや環境づくりは、子供の成長や日常生活のしやすさに大きな影響を与えます。
正しい知識と支援を得ることで、親の不安は軽くなり、子供も安心して成長できます。
「私のせいではない」という安心感を持ちつつ、「どう支えるか」を考えていきましょう。