子育て中の皆さんお疲れ様です。
前回気になる話として、発達障害の子供が増えているのか、それは親の育て方のせいなのかについて解説しましたが、反響も多く、実際に診断を受けに行くのが怖いという方もいらっしゃいました。
しかし、早く診断を受けることで、様々な支援を受けることが出来、ママやパパ、子供にとってもよい環境を作る一歩にもなります。
今回はどのような制度や支援があるのかについて、簡単にまとめて解説していきます。
発達障害の子供を抱える、ママ・パパの助けになれれば幸いです。
前回の解説記事
▶【気になる話を調べてみた】発達障害は増えている?親のせい?
目次
法律と制度
日本では、発達障害のある人が必要な支援を受けやすくするため、複数の法律や制度が整備されてきています。
これは年々変わってくる内容でもあるため、2025年8月現在のものを簡単に紹介していきます。
発達障害者支援法(2005年施行)
- 発達障害を「自閉スペクトラム症、学習障害、注意欠如・多動症(ADHD)など、脳機能の障害で日常生活に支障がある状態」と定義
- 国・地方自治体に対して、生涯にわたる支援体制の整備を義務付け
- 支援センターの設置、早期発見・早期支援、学校や職場での配慮を推進
障害者総合支援法
- 障害種別に関わらず、共通の福祉サービスを提供(生活介護、就労移行支援、短期入所など)
- 市区町村が窓口となり、障害福祉サービス受給者証の発行を行う
障害者差別解消法
- 学校や企業に、本人の特性に合わせた調整(試験時間延長、作業工程の簡略化など)を求める。
- 行政機関では2016年、民間事業者では2024年4月から義務化
行政による支援
行政による支援も様々あり、少しづつ整備されてきてます。
診断や親子のサポートや経済的支援など多岐にわたる支援が用意されていますが、知らないと損をしてしまう場合があるので、ぜひ活用してみてください。
早期発見・相談支援
市区町村の発達相談窓口
- 内容
保健センターや福祉課、子育て支援センターで、発達に関する悩み・不安を相談可能。
発達検査(新版K式発達検査、WISC、田中ビネーなど)や医療機関の紹介も受けられる。 - 対象
妊娠期〜高校生までの子供(自治体によっては年齢制限あり)。 - 申込方法
- 電話・窓口予約(自治体HPに相談日や担当部署が掲載されていることが多い)。
- 健診後に保健師から案内される場合もある。
- ポイント
- 乳幼児健診で指摘があった場合は、その場で継続的な支援につながる。
- 記録(健診結果・家庭での行動メモ)を持参するとスムーズ。
発達支援センター
- 内容
発達障害専門の地域拠点。心理士・言語聴覚士・作業療法士・特別支援教育士が在籍。
療育方針の助言や関係機関とのコーディネートも行う。 - 対象
発達の遅れや特性が疑われる子供〜発達障害と診断された子供。 - 申込方法
- 市区町村の障害福祉課経由で紹介される。
- 直接電話で予約可能な自治体もある。
- ポイント
- 定期的な利用は待機が長い場合があるため、早めの申込が重要。
- 学校や園との橋渡し役にもなる。
児童相談所
- 内容
発達障害の診断そのものより、生活全般の安定支援や一時保護、養育困難時の対応が中心。
行動問題が強いケースや虐待リスクのあるケースで介入。 - 対象
18歳未満。 - 申込方法
- 24時間電話受付あり。
- 学校・保育園経由での相談も可能。
- ポイント
- 発達障害そのものの療育支援は少ないが、福祉制度との接続に強い。
医療的支援
小児神経科・児童精神科の受診
- 内容
医師による診断(例:ASD、ADHD、LDなど)。療育や薬物療法の適否を判断。
診断書は福祉サービス利用や学校での合理的配慮申請に必要。 - 申込方法
- 紹介状があればスムーズ(発達支援センターや保健センターからの紹介も可)。
- 初診は数か月待ちが一般的なので、早めに予約。
- ポイント
- 受診前に家庭・園・学校での様子を簡潔にまとめておくと診断が正確になる。
自立支援医療(精神通院)
- 内容
精神科・心療内科・児童精神科の通院医療費が原則1割負担に軽減。
薬代も対象。 - 対象
精神疾患や発達障害で通院している子供。 - 申込方法
- 医療機関で「自立支援医療用診断書」を作成してもらう。
- 市区町村の障害福祉課へ提出。
- 受給者証が交付される。
- ポイント
- 有効期限は1年。更新時も診断書が必要。
- 医療機関と薬局は指定された場所のみ利用可能。
教育分野の支援
通常学級での合理的配慮
- 内容
席の配置変更、視覚支援カード、休憩時間の調整、支援員の配置など。 - 申込方法
- 保護者が学校担任または特別支援コーディネーターに相談。
- 校内委員会で検討。
- 教育委員会の承認を得て実施。
- ポイント
- 医師の診断書がなくても配慮は可能(文科省のガイドライン上)。
- 配慮内容は年1回以上見直しが望ましい。
特別支援学級・通級指導教室
- 内容
個別支援計画に基づき少人数で学習・生活指導。 - 申込方法
- 教育委員会の就学相談に参加し、判定会議を経て決定。
- ポイント
- 通級は「普段は通常学級+週数時間通う」形態で、学籍は通常校。
- 支援内容は自治体によって特色あり。
福祉サービス(障害児通所支援)
児童発達支援・放課後等デイサービス
- 内容
療育、SST(ソーシャルスキルトレーニング)、生活習慣の習得。 - 申込方法
- 相談支援事業所でサービス等利用計画を作成。
- 市区町村に申請(受給者証交付)。
- 利用事業所と契約。
- ポイント
- 見学・体験利用をして子供に合うか確認。
- 送迎の有無や活動内容も要チェック。
保育所等訪問支援
- 内容
支援員が保育園・学校などを訪問し、集団生活への適応を助ける。 - 申込方法
- 児童発達支援や放デイ同様、受給者証が必要。
- ポイント
- 支援員は施設職員や保護者に関わり方を助言する役割も担う。
経済的支援
特別児童扶養手当(児童福祉法)
- 内容
精神または身体に中度〜重度の障害がある20歳未満の子を養育する保護者に、毎月一定額を支給。発達障害も対象になる。- 1級:月額55,350円(重度)
- 2級:月額36,860円(中度)
※令和6年度額、所得制限あり
- 対象
医師の診断書で障害の程度が「国の認定基準」に該当する場合。発達障害単独でも重度であれば対象。 - 申込方法・流れ
- 市区町村の障害福祉課で申請書を入手
- 医師に「特別児童扶養手当用診断書」を記入してもらう
- 印鑑・戸籍謄本・所得証明書など必要書類を添えて申請
- 審査後、認定されれば偶数月に2か月分まとめて振込
- 利用時のポイント
- 更新は1〜5年ごと(障害の程度による)
- 所得制限で停止になる場合あり
- 審査は「日常生活制限の程度」が重視されるため、医師への情報提供が重要
障害児福祉手当(障害者福祉法)
- どういう支援なのか
日常生活で常時介護が必要な重度障害のある20歳未満の子に支給。
月額15,220円(令和6年度額)、所得制限あり。 - 対象
発達障害単独であっても、知的障害や行動障害が重く、日常生活に常時介助が必要と認められる場合。 - 申込方法・流れ
- 市区町村で申請書入手
- 医師の診断書を作成
- 所得証明書・写真など添付して申請
- 審査後、偶数月に前2か月分をまとめて振込
- 利用時のポイント
- 「常時介護の必要性」が厳格に審査される
- 手当と特別児童扶養手当は併給できる
児童手当
- 内容
0歳〜中学卒業までの子供を養育する全世帯対象の手当。- 3歳未満:15,000円/月
- 3歳〜小学生:10,000円(第3子以降は15,000円)
- 中学生:10,000円
- 対象
所得制限あり(超えると一律5,000円)。 - 申込方法・流れ
- 子供の出生または転入から15日以内に市区町村で申請
- 口座振込(年3回)
- 利用時のポイント
- 障害の有無に関わらず対象
- 所得制限を超えても最低限支給あり
医療費助成制度(子ども医療費助成)
- 内容
子供の通院・入院医療費の自己負担を全額または一部助成。
発達障害の治療や検査も対象。 - 対象
年齢・所得制限は自治体ごとに異なる(例:18歳まで自己負担ゼロなど)。 - 申込方法・流れ
- 市区町村で申請
- 医療証が交付され、医療機関で提示して利用
- 利用時のポイント
- 他県で受診する場合は一旦自己負担後に還付申請
- 自立支援医療と併用可(自己負担をさらに軽減)
自立支援医療(精神通院)
- 内容
発達障害に伴う精神科・心療内科・児童精神科の通院医療費を1割負担に軽減。 - 対象
発達障害(ASD、ADHD、LDなど)で精神通院治療が必要な人。 - 申込方法・流れ
- 指定医療機関で「自立支援医療用診断書」をもらう
- 市区町村の障害福祉課に申請
- 受給者証が交付され、指定医療機関で利用可
- 利用時のポイント
- 有効期限は1年、更新には診断書が必要
- 指定医療機関・薬局のみ利用可能
特別支援教育就学奨励費
- 内容
公立小中学校の特別支援学級・通級・特別支援学校に通う児童生徒の保護者に、学用品費・給食費・通学費などを補助。 - 対象
所得制限あり。発達障害で特別支援教育を受けている場合も対象。 - 申込方法・流れ
- 学校を通じて年度初めに申請
- 学期ごとまたは年度末に精算・支給
- 利用時のポイント
- 領収書が必要な場合あり
- 私立校は対象外(別途補助がある自治体もある)
障害者控除(税制優遇)
- 内容
所得税・住民税の課税所得から一定額を控除。- 普通障害者控除:27万円
- 特別障害者控除:40万円
- 同居特別障害者控除:75万円
- 対象
精神障害者保健福祉手帳、療育手帳、または医師の証明で該当。 - 申込方法・流れ
- 年末調整または確定申告で申請
- 必要に応じて手帳や証明書を提出
- 利用時のポイント
- 手帳がなくても医師の証明で対象になることがある
- 控除額が大きい同居特別障害者控除は家計負担軽減効果が高い
自治体独自の給付・助成
- 内容
交通費助成、療育施設利用料助成、紙おむつ助成など。 - 対象
自治体の条件に該当する発達障害児。 - 申込方法・流れ
- 市区町村の障害福祉課や子育て支援課で確認・申請
- 利用時のポイント
- 全国共通制度ではないため、必ず自治体HPや窓口で確認
- 条件が緩い自治体と厳しい自治体の差が大きい
保護者支援
ペアレント・トレーニング
- 内容
行動分析に基づき、子供の行動を望ましい方向に導く方法を学ぶ講座。 - 申込方法
- 市区町村の子育て支援課・発達支援センターで募集。
- ポイント
- グループ形式や個別指導あり。
- 継続参加で効果が出やすい。
ピアサポート・親の会支援
- 内容
同じ立場の保護者同士が交流・情報交換できる場を行政が設けたり、地域の親の会活動を助成。 - 申込方法
- 市区町村の福祉課や発達支援センターに登録して案内を受ける。
- ポイント
- 実際の生活の知恵や、地域の支援情報が得やすい。
保護者相談(個別カウンセリング)
- 内容
公認心理師、臨床心理士、ソーシャルワーカーなどによる定期的な相談枠。
子供の行動対応だけでなく、親のストレス・メンタル面もサポート。 - 申込方法
- 発達支援センターや教育相談センターに電話予約。
- ポイント
- 無料または低額で利用可能。継続枠は先着制のことが多い。
家族支援講座・学習会
- 内容
発達障害の特性理解、学校との連携方法、進学・就労準備などをテーマにした講習。 - 申込方法
- 市区町村の広報誌やHPで募集。
- ポイント
- 専門家(医師・臨床心理士・特別支援教育士)から最新知見を学べる。
レスパイト(保護者の休息)サービス
- 内容
短期入所(ショートステイ)、一時預かり、ファミリーサポート事業などで、数時間〜数日子供を預けられる。 - 申込方法
- 障害福祉サービス受給者証を取得して利用。
- ポイント
- 保護者の体調不良や用事だけでなく、リフレッシュ目的でも利用できる場合あり。
訪問型家族支援
- 内容
家庭訪問型児童発達支援やホームヘルプで、支援員が家庭に来て子供との関わり方を実演・助言。 - 申込方法
- 受給者証を取得後、事業所と契約。
- ポイント
- 家庭環境に合わせたきめ細かい支援が可能。
家庭でできるサポートの工夫
ここからは少し蛇足にはなりますが、家庭で出来るサポートの一部を解説していきます。
とくに子供の強みに注目することと、ママとパパのケアの部分はとても重要なので、ぜひ心に留めておいてください。
子供の「強み」に注目する
発達障害の子供は「できないこと」「困難なこと」に注目されやすいですが、研究では強みに焦点を当てることが自己肯定感や学習意欲を高めることが示されています。
人よりできないことが多いかもしれませんが、人より出来ることもあることを忘れてはいけません。
しっかり強みを活かしてあげることで、将来的に役立つ能力が身に付きます。
実践のポイント
- 得意な活動(絵、数字、運動、記憶力など)を日常に取り入れる
- 小さな成功を褒めて「できた!」の経験を積ませる
- 苦手を克服させるより、強みを活かして他の場面につなげる
見通しを持てる環境をつくる
自閉スペクトラム症の子供は、先の予定が分からないと不安や混乱が強まる傾向があります。
そのため、予定やルーティンなどを可視化してあげて、目のつくところに置いておくのも有効です。
また、知らされていない予定などは混乱しやすいため、時間をとってしっかり伝えてあげましょう。
実践例
- 1日の予定をホワイトボードや絵カードで見える化する
- 「あと5分でお風呂」など予告をして切り替えをスムーズに
- 大きな予定変更があるときは前もって伝える
コミュニケーションの工夫
発達障害の子供は、抽象的な表現や長い説明が理解しにくいことがあります。
短く、具体的に、視覚的に伝えることが有効とされています。
子供に丁寧に教えようとすると、ついつい話が長くなってしまう場合もありますよね。
そんなときは紙に伝えたい内容を書き出してみたり、注意事項は絵にして目のつくところに置いておくのも効果的です。
実践例
- 「ちゃんとしなさい」ではなく「椅子に座ってごはんを食べよう」と具体的に
- イラストやジェスチャーを添えると理解しやすい
- 怒るより「やってほしい行動」を言葉にする
- 紙などに伝えたい内容を書き出す
感情のコントロールを支える
発達障害の子供は衝動性や不安が強く、感情のコントロールが難しいことがあります。
感情を言葉にするサポートが有効とされているため、子供の気持ちを汲み取りママやパパが代弁してあげるなど、サポートを出来ることから始めていきましょう。
また、セルフコントロールを練習することも有効です。
実践例
- 「今、悲しいね」「怒ってるんだね」と親が代弁する
- 落ち着けるスペース(クッションや静かな部屋)を用意する
- 深呼吸やカウントダウンなどのセルフコントロール法を一緒に練習する
ママ・パパのストレスケアも大切
ママやパパのストレスが高いと、子供の行動問題や親子関係の悪化につながることが研究でも示されています。
ご自身のことも大切にしてあげることが、最終的に子供への良いサポートにもつながります。
行政や民間のサービスを利用したり、家族で協力しながらストレスを軽減できるようにしていきましょう。
実践例
- 行政や学校の相談窓口を積極的に利用する
- 家族や地域のサポート(祖父母、ヘルパー、一時預かり)を頼る
- 親自身のリフレッシュ時間(散歩や趣味)を確保する
まとめ
今回は法律や行政支援を中心に解説していきましたが、広く知られていないモノもあったかと思います。
知らないとご自身だけで抱え込んでしまったり、不安になってしまったりしますが。
しかも、全部を丁寧に教えてくれる人が周りにいないと、支援を活用できない場合もあるため、今回の内容が少しでも助けになればと思います。
制度や支援を活用して、子供やママやパパが少しでも安心できるように祈っています。