子育て中の皆さんお疲れ様です。
突然ですが、皆さんの家庭は共働きですか?
近年の日本では共働き世帯が全世帯の7割近くを占め、働く親と育つ子供の関係はごく日常的なものになりました。
しかし「共働き=良い」「共働き=悪い」と単純に言い切れるものではありません。
経済的理由やキャリア、働くのが好きなど様々な理由で、共働きを選択しているご家庭もあると思います。
子供が産まれるとライフステージも大きく変わり、それまで共働きだったとしても「子供のために仕事をやめた方がいいのかな?」もしくは「子供にお金がかかるし、共働きにした方がいいかな?」など悩みも生まれてくると思います。
今回は共働きが子供に与えるメリット・デメリットを解説していきますので、解決のための参考にしてみてください。
共働きのメリット
共働きと聞くと子供たちへのデメリットが先行しやすいですが、共働きならではの大きなメリットももちろんありますので、さっそく解説していきます。
柔軟な性役割意識が育つ
近年では共働きの家庭も増えて、「女性=家事」「男性=仕事」という役割ではなくなりつつあります。
共働きの家庭ではその姿が顕著になっている場合が多く、子供たちにとっても良い影響を与えています。
ハーバード大学の大規模調査では、共働き家庭で育った子供(とくに娘)が、大人になったときに平均年収が約2割高く、息子は家事・育児時間が約8割長いことを示しました。
なぜ?
- ロールモデルの多様化:家でも外でも「男性=稼ぎ手」「女性=専業主婦」という図式だけを見ずに済む。
- 役割の交渉経験:父母が分担を話し合う姿を見て、性別より能力を重視する価値観が形成される。
自立心と社会性の発達
共働きをしていると保育園や学童の利用が増えがちですが、実は子供の能力を伸ばす絶好の機会にもなります。
アメリカの「国立子ども健康・人間発達研究所(NICHD)」が約1,300人を18歳まで追跡した結果(2006)によれば、質の高い保育や学童を利用した共働き家庭の子供は、対人スキルや問題解決力の指標が高水準になっているそうです。
ここでのポイントは保育園や学童の「質」となっており、しっかり見極めないとこのメリットも活かしきれないので注意しましょう。
なぜ?
- 小さな「決定」の積み重ね:着替えや持ち物管理を自分で行う機会が増える。
- 異年齢交流:園や学童で年上・年下と混ざることで、他者の立場を想像する練習になる。
3.経済的余裕と教育投資
共働きの最大のメリットとも言える経済的余裕ですが、経済的余裕があれば子供に投資が出来ることが増えていくため、子供たちにとって大きなメリットになります。
厚生労働省が発表した「21世紀出生児縦断調査」(2022)でも、世帯年収が上がるほど、通信教育や習い事にかける月額が増え、子供の学力テスト平均点も上昇する傾向を報告しています。
ポイント
- 所得向上は「学習機会の量」を確保。
- ただし「質の選別」が伴わないと、過度の詰め込みで逆効果になる場合も。
4.勤労観のポジティブ形成
パパやママが仕事を頑張っている姿は子供たちに子供たちにポジティブな影響を与えてくれ、言葉よりも働いている姿で示す方が伝わる場合も多くあります。
日本教育社会学会の中西氏によると、親の仕事満足度が高いほど子供の将来展望(好きな仕事で生活したいなど)が明るくなると指摘しています。
もちろん、仕事の愚痴ばかりだったり、疲弊している姿ばかりだと逆効果にもなるため注意しましょう
共働きのデメリット
共働きのメリットがあれば、もちろんデメリットも存在します。
よく聞くものもあれば、意外と知らないデメリットもあるので、パートナーと話し合う時の参考にしてみてください。
デメリットの軽減方法についても後述しますので、合わせて読んでみてください。
親子時間の不足と情緒課題
共働きのデメリットとして、真っ先に上がるのが「時間」の問題です。
仕事では拘束時間が決まっているため、通勤時間などを含めると、子供との時間がどうしても少なくなりがちです。
OECDの国際比較(2019)で、日本の共働き家庭は平日の「親子の会話・遊び」が平均47分と、加盟国中最短レベルに位置しています。
時間が短いと、子供は「話を聞いてもらえない」と感じやすく、情緒不安定や反抗的態度が増えるという報告もあるため、子供と時間の問題は共働きの家庭では、どうしてもついて回る問題と言えるでしょう。
サインに注意:急な癇癪、学校での無気力、過度なゲーム依存など。
2.保育・学童の質のばらつき
共働きの家庭では保育園や学童の利用もあるかと思いますが、これらの「質」が子供に与える影響は侮れません。
NICHDの追跡研究では「保育時間」より「保育の質」が発達を左右すると結論づけており、下記の内容が満たされない場合、社会性指標が平均より低下するリスクが認められています。
- 子供5人当たり保育士1人以上
- 発達段階に合わせた遊びと学習プログラム
- 家庭と園が密に連携
3.親ストレス
残業や通勤で疲労が蓄積すると、子供の小さなミスへの叱責が増える「短気ループ」に陥りやすいと大阪大学でも警告をしています。
これが慢性化すると、子供は「自己否定的な内声」を形成し、自己肯定感が低下し成長や発達にマイナスの影響を与えてしまいます。
4.「鍵っ子」リスク
放課後に一人で過ごす小学生は、交友関係の狭さからネットいじめや危険サイトにさらされる確率が高いと少年非行白書(警察庁, 2020)でも記されております。
また、子供だけしかいない時間は自宅にいても、ケガなどの事故や犯罪に巻き込まれる可能性もあるため、必ずしも安全とは言い切れません。
防ぎ方
- 低学年は学童、高学年は地域の放課後クラブへ。
- スマホのフィルタリング設定を親子で確認。
共働きのデメリットの軽減方法
職場までの通勤時間や環境、職種により難しい場合も多々あるとは思いますが、ママやパパの工夫次第で共働きのデメリットを軽減することはできます。
ここではおススメの軽減方法を解説してきます。
1日10分の濃縮コミュニケーション
共働きになるとどうしてもついて回るのが「親子の時間不足」ですが、働いているので時間自体を大きく増やすのは難しいのが現実です。
平日は仕事と家事で慌ただしく、子供が寝る前に「今日どうだった?」と聞くだけ…という家庭も珍しくありません。
仕事で時間が限られる場合でも、1日10分の「共感的な会話」を意識的に持つだけで、子供の心理的安定感が向上します。
ハーバード大学「Serve and Return」研究は、親の応答的反応が脳の発達と情緒安定を強化すると示していますので、科学的に見てもこの対応は非常に効果的です。
おススメの方法
- 帰宅後、最初の10分を「デジタル断ち」
- スマホは充電ドックへ置き、目線を子供に合わせる。
- 「3つの質問」ルール
- 「今日一番楽しかったこと」「困ったこと」「明日楽しみなこと」を毎晩聞く。言語化で前頭前皮質が活性化し、ストレス低減にも寄与。
- 感情のラベリング
- 「それは悔しかったんだね」「ワクワクしたんだね」と気持ちを言葉にして返すことで安心感を生む。
保育・学童の質を「3つのチェックポイント」で見極める
共働きをしていると保育園や学童を利用する機会が非常に多くなりますが、子供を預ける保育園や学童の「質」が子供の成長に大きくかかわっています。
アメリカの「国立子ども健康・人間発達研究所(NICHD)」の縦断研究では、保育の「時間」より「質」が子供の社会性と言語発達を左右すると結論付けられています。
ここでは保育園や学童など子供を預ける場所の「質」を見極めるためのポイント3つと見学時のコツを紹介します。
チェックポイント
- 配置基準
- 保育士1名あたりの園児数。国基準より少ない方が望ましい。
- プログラム内容
- 季節の体験・STEAM遊び・異文化交流など多様な学びがあるか。
- 家庭との連携
- 連絡帳や面談で些細な変化も共有できる体制か。
見学時のコツ
- 子供同士のトラブル時、職員がどう介入するか観察。
- 園児が自由に選べる「コーナー遊び」があるか確認。
選択の自由は自制心を伸ばす鍵。
疲労の見える化+タスクのリシェア
共働きをしていると、仕事に家事に育児などストレスを抱える場面が多くあります。
親のストレスが、子供に与える影響は意外と馬鹿にできないため、「ストレス・疲労の見える化」や「タスクの可視化と役割の柔軟な交代」を行っていくなど、ストレスや疲労をしっかり把握して、パートナーと協力体制をとっていきましょう。
大阪大学の研究によれば、親の育児ストレスは子供の問題行動と相関にあり、育児ストレスが高いほど、子供の反抗的行動や不安傾向が強まることが報告されています。
また、同研究では、パートナーの協力がある場合は子供の問題行動が減少するというデータも示されています。
おススメの解決方法
- 週一で体調やストレスを共有
- 0〜100%で体調やストレス値を自己申告し、50%未満の日は相手が夕食・寝かしつけを担当するなど、ため過ぎない工夫をする。
- 家事タスクを「作業名×所要分数」で棚卸し
- 洗濯25分、食器洗い15分…と書き出し、時間単位でフェアに分担を再設計。パートナーの貢献を把握し、交代なども容易にする。
- 一人時間
- どちらかが育児中、片方は30分だけ好きなカフェや散歩などストレス発散を行う。短時間でもコルチゾール(ストレスホルモン)が下がることが複数研究で確認されている。
安全な居場所+テクノロジー活用
警察庁の少年非行白書では、放課後独居時間が長いほどネットトラブルや被害経験が増加傾向にあります。
子供だけで過ごす時間が長い場合、学童など大人の目がある安全な居場所の確保や、GPSなどのテクノロジーを活用して、子供たちの安全確保を行いましょう。
おススメの解決方法
- 放課後のクラブ活動や学童の活用
- 囲碁やロボット教室など“習い事付き学童”は自己効力感向上にも効果が期待できます。
- 学童や放課後のクラブ活動では大人の目が届くため、比較的安全です。
- GPS見守り&共通ルール
- 位置情報アプリ+「寄り道のルール」を親子で事前に決めておくことで、危険なエリアを回避したり、トラブルが起こった際にも対応しやすくなります。
- 帰宅通知が届いたらスタンプで「おかえり」返信し、安全確認とともに心理的距離を近づける。
- 祖父母などの協力者の確保
- 祖父母など頼れる親族が近くにいる場合は、協力関係を築き可能なら子供を見てもらうことで子供の安全を確保しやすくなります。
- 祖父母との交流が子供の情緒安定
働き方を職場と交渉
共働きだとどうしても子供との時間が少なくなりがちですが、会社の制度を利用したり、会社と交渉することで時短勤務やテレワークなどを利用できれば、子供との時間を確保しやすくなります。
厚生労働省の調査(2021年「両立支援制度の実態」)では、時短勤務を利用している親は、利用していない親よりも育児満足度が高く、子供の問題行動が少ないという結果が出ています。
また、ワークライフバランス研究の第一人者エレン・ガリンスキーも、勤務時間の柔軟性が親子関係の質を高めると繰り返し述べていることもあり、時短勤務やテレワークなどの制度を利用して、子供との関わりを増やしてみましょう。
まとめ
紺開設したように共働きは決して「子供に悪い」わけではありません。
解説の中で紹介した研究が示す通り、「適切な環境整備と親子コミュニケーション」さえあれば、性役割観の柔軟性や自立心など多くのメリットが期待できます。
もちろん、メリットだけではなくデメリットも存在しているのは忘れてはいけませんが、「働くこと」と「育てること」を二項対立に置いてしまうのではなく、家族で協力したり柔軟な考えのもとそれぞれの家庭に合った「最適解」を探ってみることが重要です。
そのうえで、デメリットを軽減するための方法についてもしっかり家族で話し合ってみましょう。
今回の記事が少しでも「共働き」について悩んでいる方の力に慣れれば幸いです。