【大変だけど悪いことだけではない】ワンオペ育児の子供への影響

子育て・出産

この記事はワンオペ育児を推奨、批判を目的にはしておらず、ワンオペせざる負えない状況の方々にメリットを含めた影響や解決方法があることをお伝えすることを目的の1つとしています。

子育て中の皆さんお疲れ様です。
皆さんの家庭ではワンオペ育児をされていますか?
色々な状況でワンオペせざる負えない方もいらっしゃると思いますし、パートナーが育児に参加してくれない方もいらっしゃると思います。
大変なワンオペ育児を頑張っている中で、子供への影響も気になると思います。
今回はワンオペ育児が子供に与える影響について解説していきます。

ワンオペ育児のメリットは?

ワンオペ育児と聞くと子供に悪い影響がありそう…と考えてしまう方もいると思います。
時間が足りない中でも子供への接し方が非常に重要にはなりますが、しっかり向き合っていけばワンオペ育児ならではのメリットもあります。

深い愛着関係が形成される

「愛着」(アタッチメント)とは、心理学者ジョン・ボウルビィによって提唱された概念で、乳幼児が特定の養育者と築く情緒的な絆を指します。
愛着は安心・安全の基盤となり、子どもが外の世界に挑戦できるようにするものとされています。
愛着の質は「人数」より「応答性」が重要とされており、複数の研究でも子供の愛着の質は、「養育者がどれだけ敏感かつ一貫して応答するか」に強く関連すると示されているそうです。

ではどうしてワンオペだと深い愛着が形成されるのかと言うと、同じ親と長時間過ごすことで一貫した関わりが出来るため、親が子供の微妙な変化に気づきやすくなり、タイミングの良い対応が可能になり、これは「情緒的同調(emotional attunement)」と呼ばれ、子供の情緒発達の安定につながるとされています。
安定した愛着が形成されれば、子どもは自己肯定感を持ち、他人とも良好な関係を築く基盤にもなります。

思いやりの心が育ちやすい

ワンオペは非常に大変ですが、親が苦労しながらも生活や育児をこなし、感情を調整しながら頑張っている姿を見ることで、子どもは「困難に耐えて努力する姿勢」や「他者に対する思いやり」を自然に学ぶことが出来ます。
また、親が多忙な中でも「手伝ってくれてありがとう」などの声かけをすることで、子供は人の役に立つことの喜びを実感し、結果として、利他的行動(prosocial behavior)つまり「思いやり」が育まれます。

自立心が育ちやすい

発達心理学者のエリク・ホーンブルガー・エリクソンが提唱した「心理社会的発達理論」では、人間の生涯を乳児期から老年期までの発達段階を8つに分類し、各段階の特徴・課題を示しています。
この理論では、第2段階にあたる幼児期初期(18ヶ月~3歳)では発達として自律性、発達課題として恥と疑惑とされており、ちょうどこの時期に当たる「2~3歳の時期に自分でやらせてもらう経験が重要」とされています。

ワンオペ育児では、忙しくて手が回らなかったりすることもあると思います。
子供にかかりっきりになることが難しい状態になると、子供が「ちょっと我慢する」「自分でやってみる」「親の手伝いをする」といった経験をする機会が自然と増えるため、自立心を育てる要因にもなります。

ワンオペ育児のデメリットは?

ワンオペ育児では、どうしても時間が足りなくなるケースが多くなる傾向にあります。
そんなワンオペ育児では、どのようなデメリットがあるのかについて解説していきます。

子どもの発達に影響する可能性

ワンオペ育児をしているとママパパ両方が育児を行っている場合と比べ、育児や仕事、生活するうえでの負荷が一人にかかってしまうため、慢性的なストレス状態となることがあり、それが子供にも影響を与えてしまう場合があります。
厚生労働省の「21世紀出生児縦断調査」などでも、育児ストレスが高い家庭の子供は、情緒や行動面で問題が出やすいことが示されています。

親が慢性的なストレス状態でいると、子供もストレスホルモン(コルチゾール)を過剰に分泌するようになり、とくに乳幼児は親の表情・声のトーン・雰囲気にとても敏感で、親の不安やイライラを“情動感染”として受け取る可能性があります。
MRI研究でも、「過度な家庭ストレスと前頭葉の容積縮小」との関連が指摘されており、幼少期に慢性的なストレスにさらされた子供は、認知機能や感情制御に関連する脳領域の発達が遅れる傾向があったと指摘されています。

また、ワンオペ育児では、外出や人との交流の頻度が減る傾向にあるため、社会的スキル(順番を待つ、感情を調整するなど)を学ぶ機会が限定されてしまうため、社会性の発達に影響が出ることもあります。
社会性の発達に影響が出ると「人見知りが強すぎる」「集団行動が苦手」「他の子とのトラブルが多い」といった問題に発展することもあるそうです。

自己肯定感の育ちにくい

幼児期の自己肯定感は、「自分が受け入れられている」「価値のある存在である」と実感できる体験を通して育まれ、ワンオペ育児の状態では、親の精神的・身体的余裕がなく、ポジティブな声かけやスキンシップの頻度が減少することがあります。
このことが原因となり、子供たちの自己肯定感が育ちにくい状況になる場合があります。

親がワンオペ育児に疲弊していると「褒める・認める・共感する」が減少し、スキンシップも少なくなり、自己肯定感が低くなってしまうことで、子供が「どうせ自分はダメだ」「迷惑をかけている」といった思いを抱きやすくなり、様々なことに消極的・依存的になる可能性があります。

ストレス下にある親は、「早く終わらせたい」「ミスを避けたい」という思いから、指示が増えたり失敗を否定しがちになり、このような関わり方は、子どもが「自分で選び、自分でやっていい」という感覚を持ちづらくなってしまいます。

依存が強くなる・ヤングケアラー化場合がある

ワンオペ育児の場合、1人の親と関わる機会が多くなり、反対に忙しさから外部の人間と関わる機会が減ってしまうため安全基地としての親への依存度が高くなりやすい傾向にあります。
また、ワンオペ育児では親の「過保護化」が起こりやすい傾向にもあり、ワンオペ環境では「ケガさせたくない」「時間がないからやってしまう」などから、子どもが自分でやる機会が減ってしまい、結果として自立経験が乏しくなり、依存的な行動パターンが定着しやすい傾向にあるそうです。

子供が親のストレスを感じ取り、「甘えたいけど無理そう」「今は我慢しなきゃ」と思うようになると、本来与えられるべきサポートを受けられないことで、「自分は大事にされるべき存在ではない」と感じやすくなります。
研究でも「親のストレスによって子どもが早期にしっかり者になると、自己肯定感の低さ・抑うつ傾向と関連がある」と示されています。

家庭内で子どもが「親の感情を読み取って気を遣う」役割を担うと、「Parentification(親役割化)」という心理的負荷がかかることがあります。
これは児童心理学でも問題視されており、子どもが自分の感情よりも親のケアを優先することで、自己形成に悪影響を与えてしまいます。
幼少期から「いい子」「親に迷惑をかけない子」としてふるまい、感情の抑圧や過剰な責任感を持ってしまいます。

デメリットの解決方法

今回解説したデメリットの部分は、ワンオペに限らずどの家庭でも起こりえます
ワンオペ育児だからではなく、問題なのはワンオペ特有の忙しさによるストレスや時間が少ない中でもどのように子供に向き合っていくかということです。
ここではデメリットであげた内容を起さないために、出来る方法を解説していきます。

孤立感・精神的ストレスを減らす

ワンオペ育児では文字通り一人で全部やってるため、孤立感を感じてしまったり、精神的ストレスが限界を迎えてしまう場合があります。
そうなってしまうと、子供へのデメリットが出てきてしまうため、ワンオペ育児をしている場合は孤立感やストレスを解消するために行動してみましょう。

話すだけのつながりを持つ

誰かに話すだけでもストレスホルモン(コルチゾール)が減るという研究もあるため、友人、SNS、カウンセリングなど、少ない時間でも話すことが出来る相手を作りましょう
注意したほうがいいのは、友人やSNSなどは外部に話が漏れてしまう可能性があること。
そのため、信用できる友人だけにしておいたり、カウンセリングなどの守秘義務があるサービスを使うことをおススメします。

行政や民間の育児サポートサービスを調べて利用する

様々な自治体では児童館、子育て支援センター、シッター、ファミサポなどの支援サービスを行っている場合があります。
また、民間でも同じような預かりサービスや訪問サービスを提供している場合があります。
外部のサービスを利用することで、親は休息をつくれ、子供は他の人との関わりを持つことが出来るので、非常に便利です。
まずは近くで利用可能なサービスを調べてみましょう。

パートナーがいる場合は話し合う

こちらは当たり前ですが、パートナーがいる場合は現状について話し合いをしましょう。
パートナーが仕事や家庭の状況により育児に参加できていない場合は、ワンオペ育児のストレスや孤立感を軽減できるよう代わりになる案などをしっかり話し合うことをおススメします。
パートナーの性格ややる気などの問題である場合は、「察して」ではなく「これお願い」と明確に伝えるなど小さいことからでも、育児に参加させるようにしてみましょう。

依存を回避する

ワンオペ育児では子供が一人の親と関わる時間が長いため依存しやすいですが、このデメリットは「親以外の人との関わりを作る」ことで簡単に回避することが出来ます。
保育園、園外活動、親子イベント、子育てサロンなどを活用したり、祖父母や近所でよくしてくれる人との関わりでも大丈夫です。
親以外に子供が信頼できる人を作ることで、依存を回避することが出来ます。

子供とのかかわり方を変えてみる

子供の自立心を育てたり、自己肯定感をあげるためにも、子供とのかかわり方を見直してみるのもいいかもしれません。

子どもに「任せる」「選ばせる」経験を増やす

自立の第一歩は「小さな自己決定の積み重ね」です。
自分で選び、やってみる経験が自己肯定感と自立を育てるとも言われており、ワンオペ育児をしていると子供が選ぶのに時間がかかったり、子供にやらせると失敗して手間が増えてしまうため、ついつい親が手を出してしまうこともあると思います。
しかし、子供のためにぐっと我慢して、失敗したとしても子供自身に選ばせ、挑戦させてあげてください

子供だけに集中する時間を作る

最初は毎日ではなくても大丈夫ですが、例えば寝る10分前の時間だけは子供話に耳に傾け、子供の頑張ったことうれしかったこと、悲しかったことなどをしっかり聞いてあげてください。
そのうえで叱ったりするのではなく、「褒める・認める・共感する」を意識して声掛けをしてあげてください。
慣れてきたら毎日のルーティンに組み込むことで、短時間でも質の高い関わりを持つことが出来、子供の自己肯定感を育むことにつながります。

100点の育児を目指さない

ワンオペ育児になると「自分がしっかりしなきゃ」と思いがちですが、この考えが親と子供を追い込んでしまっている可能性があります。
家事・しつけ・遊びなどすべて100点を目指さないことで心に余白ができるため、しっかりやるところはしっかりやって、他の部分は子供に選択を任せてみたり外部のサービスや商品を使うなど、
「こうあるべき」という考え方を捨てて、「ゆる育児」をしてみましょう

まとめ

ワンオペ育児は本当に大変ですよね。
子供への悪影響も考えてしまいますが、ワンオペという環境もうまく活用できればメリットもたくさんあります。
子供への関わりも深くなるので、子供からのサインを見逃さずにしっかり向き合っていくことが重要です。
また、パートナーがいるなら参加してもらい、親族や友人など助けてくれる人がいるならば助けてもらい、サービスや商品などもしっかり活用して、ワンオペをしている親自身の負担の軽減もしていくことでデメリットを軽くしたり、メリットを得やすくなります。

ワンオペ育児は時間やタスクに追われ続けるため、子供のためやっていると思いつつ子供との向き合うことが減ってしまう場合があります。
筆者もワンオペ育児をしていて、登園の準備やお弁当の作成、送り迎えの時間の厳守、バランスの良い食事の用意に、お風呂や終身起床時間を守ることに注力しながら、自分では頑張っていたと思っていました。
もちろん会話も何かしながらではありましたが、していたつもりです。
しかし子供から「さみしい」と言われたことがあります。
てっきり妻が仕事で平日は朝と夜にならないと会えないからだと思いましたが、「お父さんに見ていてほしい」と言われ、ハッとしたことがあります。
子供にとっては自分だけを見て、しっかり向き合ってくれることが嬉しくて、大切なんですよね。

最後にワンオペ育児でも子供はしっかり育ちます。
子供と向き合いながら自分自身にも向き合って、必要があれば誰かに頼ることも忘れずにいましょう。
ワンオペ育児ですでに頑張っているのだから、頑張りすぎないようにしましょう。