【つい言ってない?】子供に「ダメ」と言い続けた時の影響と4つの改善方法

子育て・出産

子育て中の皆さんお疲れ様です。
子供に「禁止する言葉」を無意識のうちに言ってしまっていませんか?
子育ての中で、子供の危険な行動や困った行動を止めようとして、つい「ダメ!」「やめなさい!」と繰り返し言ってしまうことは、多くのママやパパが経験していると思います。
そもそも「禁止する言葉」は「使わない方がいいのかな?」「でも必要な時もあるよね?」と曖昧な部分が大きいと思います。

今回は「禁止の言葉」が繰り返されることで、子供にどのような影響があるのか、そして改善するにはどのように声かけを変えていけばよいのかについて、詳しく解説していきます。

「禁止の言葉」が子供に与える影響

禁止するような「ダメ」「やめなさい」「○○してはいけない」などの言葉は、日常生活でもよく使われており、子育てにおいても「人を叩いてはいけない」「ご飯をちゃんと食べなきゃダメ」「遊ぶのをやめなさい」など子供に言っている、もしくは聞いたことがある方もいると思います。
そんな「禁止の言葉」が子供に与える影響を見てみましょう。

自己肯定感の低下

「またダメって言われた」「どうせ僕はダメなんだ」など禁止の言葉を繰り返し聞く子供は、否定されたような気持になり、自分に対する評価を下げていってしまいます。
落ち込みやすく、精神的に不安定になってしまったり、挑戦への意欲が減るなどの可能性があります。

アメリカの心理学者ロバート・ブルックス氏とサム・ゴールドスタイン氏は、自己肯定感は子供のレジリエンス(困難に立ち向かう力)の土台になると述べています。
否定的な言葉ばかり浴びていると、「どうせ自分なんか」と感じやすくなり、意欲の低下や挑戦を避ける行動につながる可能性があります。

ママやパパの声が「雑音」になる

禁止ばかりされると、子供は「どうせまた怒られる」「またダメって言うんでしょ」と、子供は徐々にママやパパの言葉に耳を貸さなくなってしまいます。
そうすることで、危険な場面で声かけが効かなくなったり、ルールを守らせるために親がどんどん怒鳴るようになる負のループに落ちいってしまう可能性があります。

脳科学的には、報酬系(ドーパミン系)の刺激がない否定的な言葉は、子供の注意を引きづらくなります。
つまり、「どうせ怒られるし…」という学習がされてしまい、ママやパパの言葉を無視する行動が強化されていく可能性があるのです。

好奇心や自発性の減退

禁止を繰り返されると、子供は「やらされている」と感じたり、「やらない方が怒られない」と学習して探索行動を制限してしまいます。
発達理論では、子供は自ら探索・試行錯誤しながら知識を獲得する「能動的な学習者」とされており、とくに幼児期は感覚運動や前操作期に該当するため、好奇心に基づく探索行動が発達の中核になりますが、子供が探索行動を制限してしまうことで、発達にも影響を与えます。

また、心理学者エドワード・デシ氏とリチャード・ライアン氏が提唱した自己決定理論では、人は「自律性・有能感・関係性」の3つの欲求が満たされることで、自分からやりたいという気持ちが高まるとされています。
禁止ばかりの環境では、これらの欲求が満たされず、子供の自発的な行動や学びが失われていきます。

コントロール力の低下と反抗

禁止の言葉には、ママやパパの感情が込められていることもありますよね?
例えば「ダメって言ったでしょ!」と感情的に言ってしまうと、子供も同じように感情で反応します。
行動理論モデルでは親が否定的な対応を繰り返すと、子供はそれに対抗して反抗的な行動(怒る・叫ぶ・無視するなど)を強化するようになるとされています。
これは親子の「悪循環」を生みやすく、子供の行動問題をエスカレートさせる原因にもなってしまいます。

心理学者スーザン・デナム氏は、子供の感情調整力は大人の感情的な関わり方から学ばれると指摘しており、感情を受け止めてもらう経験が少ない子供は、感情調整が苦手になり、情緒的な不安定さや攻撃性につながるリスクが高まります。
禁止を感情的に繰り返すことで、子供の情緒安定や自己コントロール力を育む機会を奪ってしまう可能性があり、わざと禁止されたことをやるなど逆効果になってしまいます。

親子関係の悪化

禁止する言葉を頻繁に使ってしまうと、子供がママやパパに対して信頼感を感じなくなり、親子関係の悪化を招き、子供がママやパパに本音を話さなくなってしまったり、非行に走ってしまう場合があります。

ボウルビィ氏の愛着理論では、子供と養育者の「安全基地」となるような関係性が、情緒の安定と社会性の基盤を育てるとされます。
禁止する言葉のように否定的・命令的な関わりが続くと、安全基地としての信頼が築けず、ママやパパに対する信頼や愛着が弱くなる可能性があります。

改善のための声かけと対応方法

発達神経学の分野では、子供の脳はまだ前頭前野が未熟なため、「〇〇しないで」「ダメ」のような否定文をうまく処理できないことがわかっています。
例えば、「走らないで」と言われると「走る」という行動のイメージが先に浮かび、結果として走ってしまうことがあります
これは脳の仕組みによる自然な反応であり、子供が「わざと」聞かないわけではありません。

ここでは改善方法について解説していきますので、禁止する言葉を掛けてしまっている時はぜひ試してみてください。

禁止よりも「してほしい行動」を伝える

子供の発達に合わせた言い方が出来ると、子供もどうすべきなのかを明確にとらえることが出来るようになるので、「〇〇しないで」ではなく、「〇〇してね」と伝えるような声掛けに変えてみましょう。
言い換えるだけで子供は何をすればいいかが理解しやすくなります。

  • ×「走らないで!」→〇「歩いてね」
  • ×「触っちゃダメ」→〇「お手てはおひざに」

子供がしてほしい行動をしてくれた時には、行動の内容を具体的に褒めることで、その行動が増えやすくなります。
これは強化理論(オペラント条件づけ)では、望ましい行動を強化(褒める)することで、それが繰り返されやすくなることが示されています。

行動の理由を短く説明する

ただ「ダメ」と言っているだけでは子供も意味が理解できず、納得できないこともあるでしょう。
わかるだろうと思わずに、行動の意味や目的を子供に伝えることで、納得感が生まれます
また、子供は年齢によって長く集中できず、話が長くなると話を理解できなくなる場合があるため、なるべく短くわかりやすい説明を心がけましょう。

  • 「道は車が来るから、手をつなごうね」
  • 「ガラスは割れたら危ないから、そっと置こうね」

説明することは時間がかかるように見えて、長い目で見れば理解力と自制心を育てる近道になります。

感情ではなく「ルール」として伝える

子育てをしているとイライラしたり、怒ってしまうこともありますが、子供にとってはママやパパの一貫した態度が安心につながります。
感情から来る「禁止」ではなく、冷静にルールとして伝えることが大切です。

  • 「お風呂の中では走らないのがルールだよ」
  • 「お友達を叩くのは、どんな時もだよやってはいけないルールだよ」

感情的にならずに一貫した態度を取ることで、子供も安心して行動の枠組みを理解していけます。

子供の気持ちに共感し言語化する

子供の行動にもちゃんと理由がありますが、それを言語化することが難しい場合があります。
禁止する前に、「そうしたくなる気持ち」をまず認める・共感することで、子供の気持ちが落ち着きやすくなります。
また、「なんでそんなことするの!」と叱る前に、子供の気持ちや動機にも目を向けてみましょう。

  • 「走りたくなっちゃったんだね。楽しいもんね。でもここは危ないからゆっくり歩こう」
  • 「まだ遊びたかったよね。楽しかったもんね。でもお約束の時間だよ」

このように共感しながら気持ちを代弁してあげると、子供は感情を表現する方法を学び、落ち着いて話を聞けるようになります。

禁止する言葉が必要な状況もある

子供はまだ発達の途中にあり、「なぜダメなのか」「どうすればいいのか」を一つずつ学んでいく段階にあり、成長を信じて関わっていくことが大切でもあるのですが、「禁止する言葉」がすべてダメというわけではありません。
では、どのような状況なら「禁止する言葉」が必要となるのかについて解説していきます。

即時の危険回避

例えば、道路に飛び出そうとしたときや、高所から飛び降りようとしているときなど、「やめて!」「ダメ!」と即時に強く伝えることは命を守るうえで不可欠です。
日常とは反対にこのような「緊急の場面」では禁止的な言葉を使うことが推奨されていることを覚えておきましょう。

禁止する言葉はその場においては強い効果を発揮するため、その効果を失わせないためにも、「禁止する言葉」は本当に必要な状況に限り使うようにし、普段は子供の成長に寄り添った対応を心がけておきたいですね。

禁止する言葉を使った後は理由を説明する

危険回避のために「禁止する言葉」を使った場合、そのあとにフォローすることも忘れないでください。
「なぜ止めたのか」「なぜその行動は危険なのか」を年齢に応じた言葉で丁寧に説明することが重要となってきます。

例えば子供が道路に飛び出しそうになった後は、「急に道路に出ると、車が見えなくて危ないんだよ」など理由を明確にしながら説明してあげましょう。
これは子供の脳の発達という観点で見ると、「禁止」の代わりに「言い換え」を使う方法と同じような効果を得ることが出来ます。

まとめ

ついつい言ってしまいがちな禁止する言葉は、その場・その時には効果があったとしても、長い目で見ると子供の自己肯定感や自立心、感情調整力に悪影響を及ぼす可能性があることを忘れないようにしたいですね。
また、禁止する言葉を頻繁に使っていると、親子としての関係にもヒビを入れかねないため、「つい言ってしまったな」と感じたら、次の機会には「どう言えば伝わるかな?」と一歩立ち止まることが大切です。
禁止する言葉は本当に必要な時にだけ使う、特別な言葉として温存しておきましょう。

今まで頻繁に使っていたと自覚している人も、無意識で使ってしまっていた人も、これから変えていけばまだ間に合うかもしれません。
ママやパパも人間です。間違えてしまうこともあるでしょう。
間違いに気が付いた時に変えていけるかが大切なことなのです。
もしもこの記事を読んで変わりたい方がいれば、パートナーや子供にも話して周囲の協力を得ながら、少しづつでも頑張っていきましょう。